ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

グラミー特集:ボブ・ディラン

2010-01-28 19:07:33 | ルーツ・ロック
BOB DYLAN / TOGETHER THROUGH LIFE

前回取り上げたニール・ヤングに続いてボブ・ディランです。ボブ・ディランは『Best Solo Rock Vocal Performance』部門の他に『Best Americana Album』部門にもノミネートされています。この部門、数年前まで無かったと思うんです。元々『Best Contemporary Folk Album』部門だったのが、06年度あたりから『Best Contemporary Folk/Americana Album』部門になり、今回めでたく“アメリカーナ”が独立した感じでしょうか? この手の部門が増えることは嬉しいのですが、“アメリカーナ”というジャンル自体がつかみ所の無い感じで、実は私も良く分かっていなかったりします。ですがノミネート作に眼を通しますと、アメリカーナの指す音楽がなんとなく見えてきます。

Bob Dylan / Together Through Life
Levon Helm / Electric Dirt
Willie Nelson & Asleep At The Wheel / Willie And The Wheel
Wilco / Wilco (The Album)
Lucinda Williams / Little Honey

個人的には今回のグラミーの中での最大激戦区です! 当ブログの年間ベスト・アルバム上位陣がひしめいています。ちなみにボブ・ディランの「TOGETHER THROUGH LIFE」が09年の6位、レヴォン・ヘルムの「ELECTRIC DIRT」が09年の4位、ウィリー・ネルソン&アスリープ・アット・ザ・ウィールの「WILLIE AND THE WHEEL」が09年の2位、ルシンダ・ウィリアムスの「LITTLE HONEY」が08年の4位でした。もちろんウィルコも大好きですし。で、この並び方から見えるアメリカーナとは、現代的とか、ロック的とか、そういう視点でアメリカン・ルーツを掘り下げた音楽、って感じですかね? ま、その定義はともかくとして、アメリカーナは私の大好物なのであります。

個人的にはレヴォン・ヘルムに受賞して欲しいんですけど、今日は敢えてボブ・ディランです。なんてったってもうすぐ来日しますからね。さて、オーティス・ラッシュの「All Your Love」を思わせるラテン・ブルース「Beyond Here Lies Nothin'」で幕を開けるこの「TOGETHER THROUGH LIFE」。その「Beyond Here Lies Nothin'」や「My Wife's Home Town」、「Jolene」、「Shake Shake Mama」といったブルージーなナンバーでの妖気めいた雰囲気が格好良いですね。ガレージっぽいギターに絡むアコーディオン。そして濁声を吐き捨てていくかのようなディランの歌声はそんじょそこらのブルースよりはるかにブルース臭を匂わせています。そして「Life Is Hard」や「This Dream Of You」のうようなスロー・ナンバーがまた良いですね。前者には男の哀愁、後者にはロマンティックな慈愛のような味わい、いや上手く言葉では表せませんが、今のディランにしか成し得ない境地です。

バック・メンバーはギターとマンドリンでトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・キャンベル、ベースには元アスリープ・アト・ザ・ウィールのトニー・ガーニエ、アコーディオンとギターでロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴ、ドラムスにジョージ・リセリ、さらにスティール・ギターからトランペットまでこなすBR549のドン・ヘロン。今回、ディランはハープを吹いていないようですが、彼の弾くオルガンがなかなか良いんですよね。そしてやはりデヴィッド・ヒダルゴの参加が大きいですね。彼のもたらしたラテン色がこのアルバムの肝ですよね。

もちろんディランは過去にいくつものグラミーを受賞しています。前作でも受賞しました。実は今回ノミネートされた2部門って、前作「MODERN TIMES」で受賞した2部門と同じなんですよね。もちろんまだ『Best Americana Album』部門ではなくて『Best Contemporary Folk/Americana Album』部門でしたけどね。さらにその前の「LOVE AND THEFT」と「TIME OUT OF MIND」も『Best Contemporary Folk Album』部門を受賞しているんです。まさに新作をだせばこの部門を受賞する感じがする近年のボブ・ディランなのです。今年も強そうですね~。

グラミー特集:ニール・ヤング

2010-01-28 11:21:46 | ルーツ・ロック
NEIL YOUNG / FORK IN THE ROAD

今年のグラミー、主要部門はトレンディーな人達が優勢ですが、ロックの部門ではベテラン勢が頑張っています。それが最も色濃く表れているのが『Best Solo Rock Vocal Performance』部門。ノミネートは以下の通り。

Bob Dylan / Beyond Here Lies Nothin'
John Fogerty / Change In The Weather
Prince / Dreamer
Bruce Springsteen / Working On A Dream
Neil Young / Fork In The Road

どうですかこの平均年齢の高さ! 若いロック・シンガーは何をやってるんでしょうかね? パフォーマンス部門ですよ? それにしてもこれだけの大物がよく並んだものです。ボブ・ディランにブルース・スプリングスティーンにジョン・フォガティですよ!こういう人達が意欲的に作品をリリースし、ロックし続けていることは非常に嬉しいことですよね。 でもここにプリンスがノミネートされるというセンスはグラミーならではですかね?

そしてこの中で最も精力的な活動を見せるのがニール・ヤング。次々に新作を発表し、その合間に過去音源もリリース。昨年は究極のボックスセットも発売になりましたね。ま、この人はデビュー当時から気分屋な上に多作家なイメージがありますが、驚きのアーカイブ作品と個性的な新作群が交錯する現在もまさにその面目躍如な感があります。

ノミネートされた「Fork In The Road」は最新アルバム「FORK IN THE ROAD」のラストに収められたタイトル作。社会への批判がたっぷり詰まったブギ・ナンバー。ニールは毒気を帯びた低い声で吐き捨てるように歌います。ダウンロードやブログにまで言及していてなかなか痛快。この曲の冒頭、車で“この国”を走るところから始まりますが、このアルバムのほとんどの曲が車についての歌、もしくは車が出てくる曲で締められています。

実は今ニール・ヤングは“Linc Volt”という、電気と天然ガスで走るハイブリッド・エコ・カーに熱心に取り組んでいるようで、言わばこのアルバムはそのエコ・カーを中心に環境問題や現代社会に対するメッセージを込めたコンセプト・アルバムともいえる訳です。車を扱うだけに全面的にロック・モードの作品で、歪んだエレキ・ギターがほぼ全編に響き渡ります。ニール・ヤングの歌声は相変わらず繊細なのか力強いのかさっぱり分からないですが、そこに彼にしか成し得ない説得力があるんですよね~。

ヘヴィーなギター・リフが印象的な「When Worlds Collide」や「Hit The Road」。流麗なメロディと爆音の絡みがニール・ヤングらしい「Just Singing A Song」。エコ・カーでハイウェイを飛ばすように軽快な「Johnny Magic」。そんな中にひっそりと佇むスロー・ナンバー「Off The Road」と「Light A Candle」の味わいも出色。時代に逆行するがごとくの荒っぽい質感が故に、反って時代のまっただ中に居る新鮮さを感じさせられます。


ちなみに例のボックス・セット「NEIL YOUNG ARCHIVES VOL.1 (1963–1972)」が『Best Boxed Or Special Limited Edition Package』部門にノミネートされています。ブルーレイ10枚組みという、まさに究極のボックスですね。全128曲!! 中には未発表のレア音源もたっぷり入っているという。しかもまだ“VOL.1”ですから! ボックス・セットたるもの、ヴォリュームがあればあるほど価値があり、完成度も増すと私は考えていますが、ここまでやられちゃうと逆に手が出ません…。


さて、そんなニール・ヤングを含むベテラン・ロッカーの争いとなった『Best Solo Rock Vocal Performance』部門、果たして栄光は誰の手に? ちなみに他の部門では、エリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッド、ホール&オーツ、ジェフ・ベック、AC/DCなんかもノミネートされています。