ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

09年ベスト・アルバム6位~10位

2010-01-13 23:47:52 | 2009年総括
6位

BOB DYLAN / TOGETHER THROUGH LIFE
やっぱりボブ・ディランでしょう。この声には抗いがたい説得力があります。前作「MODERN TIMES」の延長上にあるような作風ではありますが、ロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴの参加によるラテン色に新たな妖気を感じますよね~。そしてアルバム全体がディランならではの緊張感で包まれていますね。ディランの声には前作同様に魔力的な強さを感じますが、それと同時に何処か儚げな響きも感じます。そしてバック・バンドの演奏は芳醇なルーツ・ミュージックを奏でながらも、退廃的に歪んでいる。このアルバムの持つ不思議な緊張感は、そんなアンバランス感が絶妙の均衡を保っているからなのかもしれませんね。「Beyond Here Lies Nothin'」や「If You Ever Go To Houston」のような異国情緒の深い曲が特に秀逸。「Life Is Hard」や「This Dream Of You」のようなセンチメンタルな曲も味わい深い。マディ・ウォーターズのあの曲を使った「My Wife's Home Town」も強烈。全体の色合いとしては“枯れ”ているかもしれませんが、でもその“枯れ”をも“凄”みに変えてしまう力をディランは持っている。やっぱりディランは魔王なのです! って6位じゃちょっと低過ぎるかな~。ちなみに前作「MODERN TIMES」は当ブログの06年ベストアルバム第1位でした。

7位

FUNKY METERS / LIVE IN JAPAN
ニューオリンズ・ファンクの雄、ファンキー・ミーターズによる09年の夏に行われた渋谷クワトロ公演の実況録音盤。2枚組で2時間越え。これは沼です。底なし沼です。肩までどっぷりな感じです。これぞバイユー・ファンクの真骨頂です。有名な曲や大好きな曲が次から次へと繰り出されるのも感無量ですが、それ以上にただただグルーヴに浸かり続ける快感! まるでアメーバのようにリズムを変化させていくバイユー・ジャム・セッション。堪りません。私はこの日のライヴは見逃しましたが、この2日後フジロックで観ました。私にとって今年のベスト・アクトでした。それにしてもバティステのドラムは凄いですね~。フジで観た時以上のパワフルさを感じます。そしてイアン・ネヴィル。彼もソロになると結構弾いていた印象がありますが、こんなにアグレッシヴだったかな~? で、全体的にエコーが深くかけられてる感じで、どこかサイケ・ファンク的な雰囲気すら感じさせる。緩さともっちゃり感を色濃く感じたフジとはちょっと違う印象ながら、そこがまた新鮮で格好良い! アート・ネヴィルのオルガンも良い音してますし、沼グルーヴを強烈にうねらせるジョージ・ポーター・ジュニアのベースも最高です。若きイアンのカッティングも中毒性があって良いですし、それらを後ろからガンガン攻め立てるようなバティステのセカンドライン・ビートも強烈! 4人それぞれの音が刺激し合いながら絡み付き、ドロドロと2時間強のファンク沼。あ~、また生で体験したい!!

8位

LITTLE JOE WASHINGTON / TEXAS FIRE LINE
ダイアルトーンが誇るテキサス・ブルースの怪人リトル・ジョー・ワシントン、4年振りの新作。のっけからJBの「I'll Go Crazy」をグシャグシャに歌い、掻きむしるようにギターを弾きまくる。これがブルースか?いやこれぞブルースでしょ! 洗練されて奇麗になりすぎたブルースばかりが幅を利かせる昨今ですが、ここではそんな洗練とはおよそかけ離れたプリミティヴな勢いに圧倒されます。正直、歌もギターも決して上手くはないですよ。ですが驚異的にエグイ。もうまるでエグ味の塊。そのエグ味でもってサム・クックの「You Send Me」やヘッドハンターズの「Chameleon」なんかをやってしまう破天荒さ。堪りませんね。しかも「You Send Me」はかなり良い!! このやさぐれた歌唱はこの人にしか出せない味わいですね。そしてギターも凄い。流石はテキサスな切れ込みを感じさせながら、感情先攻で弾けまくる。もういかがわしいフレーズの連発ですが、そこにリトル・ジョーならではの泥臭さが溢れています。そんなやりたい放題なリトル・ジョーに対してタイト且つふくよかなグルーヴを提供するバック・バンドがまた素晴らしい。ダイアルトーンの職人達ですね。自由奔放なリトル・ジョーをどっしりとしたの演奏でカチッとサポートしています。ホーン隊を含む極上なサウンドが何故かドロドロのリトル・ジョーとよく絡むんですよね。ギラギラとしたアール・キングの「Those Lonely Lonely Nights」は特に絶品です。



9位

JIM LAUDERDALE / COULD WE GET ANY CLOSER?
快調に新作をリリースし続けるジム・ローダーデイル。ドリーム・プレイヤーズを率いた前作「HONEY SONGS」も素晴らしい作品でしたが、今作はブルーグラス・アルバムです。カントリー・ロックなイメージのあるジム・ローダーデイルですが、実は過去に2度もグラミーのブルーグラス部門を受賞しているグラッサーなのです。で、今作も本年度のグラミー賞にノミネートされています。まず曲が良い!! 全曲ジムの作曲及び共作曲で締められています。各メンバーが鬼のようなテクニックで疾走する脅威のハイ・スピード・ナンバー「I Took A Liking To You」からスタートし、雄大な大地を思わせる、カントリーらしい開放感と哀愁をメロディーに乗せ、ロマンティックな土っぽさを持った歌と演奏が並びます。アコギ、マンドリン、バンジョー、フィドルの音色からブルーグラスの魅力がたっぷり味わえると同時に、ジムらしいロック・テイストも隠し味的に感じられます。そしてプロデューサーでもあり、ジムの過去作でも活躍していたRANDY KOHRS のリゾネーター・ギター。彼のスライドは今後も注目です!

10位

JOHN BOUTTE & PAUL SANCHEZ / STEW CALLED NEW ORLEANS
実は08年の作品のようなのですが、多分日本に入ってきたのは09年だろうと言うことで…。ジョン・ブッテとポール・サンチェスの共演盤です。現在のニューオーリンズ・シーンで注目を集めるシンガー・ソング・ライターの二人ですが、どちらもデビューは90年代という比較的若い世代。特にジョン・ブッテは近年驚異的に頭角を表してきてますね。1曲目「Stew Called New Orleans」からブッテの暖かみのあるハスキーな声はもうソウルフルを通り越して“崇高”と評したい響き。バックの演奏がシンプルなので余計にブッテの歌声がダイレクトに染みてきます。スロー・ナンバー「A Meaning Or A Message」なんか染みまくりです。一方のポール・サンチェスも、柔らかさと苦みを伴った素晴らしい声の持ち主で、二人のリード曲が交互に配され、その個性の対比と融合も面白い。サンチェスの弾くアコースティック・ギターも美しいですね。そしてもう一人のキーマンがトランペットのリロイ・ジョーンズ。彼のペットがトラディショナルな香りを吹き込みます。オリジナル中心の曲目も心地よいスウィング感を持った秀曲揃い。カヴァーではジェリー・ロール・モートンの「I Thought I Heard Buddy Bolden Say」やポール・サイモンの「American Tune」も取り上げています。「American Tune」でのブッテの歌唱も神がかってますね。