ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

09年ベスト・アルバム4位~5位

2010-01-15 15:32:31 | 2009年総括
4位

LEVON HELM / ELECTRIC DIRT
レヴォン・ヘルムの最新作。まるでザ・バンドのような1曲目「Tennessee Jed」からテンション上がりまくりです。前作「DIRT FARMER」も素晴らしかったですが、それから2年後という早いスタンスでまたも傑作を届けてくれました。咽頭癌を乗り越えてのこの充実振りは嬉しい限りですね。前作はアコースティックを基調としたトラディショナルな味わいが濃い作品でしたが、それに比べると今作はおよそ半数の曲でエレキギターが前面に出て、数曲ではブラス隊も入るなど、ブルース色やロック・テイストを増した華やかな仕上がりになっています。

何はともあれレヴォンの歌声が良いですね。しゃがれてはいますがハリがある。そして独特の躍動感に溢れてる。土っぽくて、ファンキーで、めちゃくちゃソウルフル! 何より人間味に溢れてる! こういう歌を歌える人ってなかなか居ませんよね。もちろんドラミングも最高! やっぱりザ・バンド独特の跳ねたリズムはレヴォンが産み出していたんだと再確認させられました。あとマンドリンも弾いてますよ~!

プロデューサーは前作から引き続いてラリー・キャンベル。バックにはキャンベルの奥方テレサ・ウィリアムスや、レヴォンの娘エイミー・ヘルム、そのエイミーのバンド仲間でもあるバイロン・アイザックス(b)、ピアノやオルガンからアコーディオンまで弾きこなすブライアン・ミッチェルなど、近年のレヴォン周辺でお馴染みといったメンバーが名を連ねています。まるで“レヴォンと愉快な仲間達”的な雰囲気ですが、それは音楽からも伝わってきます。

そして「Tennessee Jed」にいかにもザ・バンドなホーン・アレンジを施しているのはセックス・モブのスティーヴン・バーンスタイン。これなんて往年のアラン・トゥーサンを意識してるんだろうな~、なんて思っていると、7曲目「Kingfish」と11曲目「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」ではそのアラン・トゥーサンがホーン・アレンジにクレジットされている!! 堪りませんね~

曲目はカヴァー中心ですが、グレイトフル・デッド、マディー・ウォーターズ、ランディ・ニューマン、ステイプル・シンガーズ、ハッピー・トラウム、ニーナ・シモンなど、ジャンル・レスでありながらレヴォン・ヘルムらしい選曲になっています。この選曲のセンスもさることながら、レヴォンの個性とバンドの一体感でカッチリと一つの作品に纏め上げられているところがまた素晴らしい!


5位

BUDDY & JULIE MILLER / WRITTEN IN CHALK
昨年のグラミー賞で主要3部門を総なめにしたロバート・プラント&アリソン・クラウス。その時のパフォーマンスで、その二人とT・ボーン・バーネットの陰に隠れてほとんど画面に映らないギタリストが居たのをご存知でしょうか? そのギタリストこそ今作の主役バディ・ミラーなのです。

バディ・ミラーはオルタナ・カントリー界の名ギタリストとして知られ、数あるサポートの中でも、エミルー・ハリスのバック・バンド“スパイボーイ”での活躍は有名で、その名演は彼女の98年のライヴ盤「SPYBOY」として残されています。近年ではソロモン・バークのカントリー作「NASHVILLE」(06年作)のプロデュースが印象深いですね。ソウルとカントリー、もしくは黒人と白人の垣根を取り払った素晴らしい作品でした。もちろんソロのシンガー・ソング・ライターとしても活躍し、素晴らしい作品を多数残しています。04年の「Universal United House of Prayer」は傑作でしたね。

そして今作のもう一人の主役がバディの奥方ジュリー・ミラー。彼女もシンガー・ソング・ライターとして90年代からソロ作を数作品残しているのですが、残念ながら私は聴いたことが無いんですよね~。すいません…。で、このご夫婦は、それぞれで活躍する一方、夫婦名義の作品も残しているわけです。今作はその3枚目になるのでしょうか?

ラリー・キャンベルのフィドルに導かれて始まる1曲目「Ellis County」。哀愁たっぷりの旋律が素晴らしいジュリー・ミラーの作品で、なんとアルバム全12曲中8曲がジュリーの作となる曲で締められています。ジュリーの作り出す素朴且つ切ないメロディーが今作の核になっている感じです。そしてそのメロディーと共に二人の個性的な歌声が聴けば聴く程染みてくる。アウトローな響きを持つバディの声と、儚さと刺とを併せ持つようなジュリーの歌声。そして両者のハーモニー、最高です。

今作中唯一の夫婦共作ナンバー「Gasoline And Matches」はガレージ風味のオルタナ・カントリー。ジュリーの静かな歌声が美しいスロー・ナンバー「Don't Say Goodbye」。ここでハーモニーを付けるのはパティ・グリフィン。ロバート・プラントとジェイ・ベルローズ(ds)が参加し、あの雰囲気を再現するかのような「What You Gonna Do Leroy」。スチュワート・ダンカンのフィドルとガーフ・モリックスのラップ・スティールが効いてますね~。そして元はおそらくリズム&ブルース系の曲と思われるカヴァー「One Part, Two Part」はスカッとしたカントリー・ロックに仕立て上げられている。しかしバックにはREGINA & ANN McCRARYという黒人姉妹がコーラスを付けるという憎い演出。その他、ジュリーの物憂い歌声に惹かれるジャジーな「Long Time」、バディの重くソリッドなギターが格好良いブルース・ロック「Memphis Jane」などなど。最後はエミルー・ハリスがコーラスを付けた「The Selfishness In Man」で雄大に終わる。名盤です!



それにしてもレヴォン・ヘルム(4位)とバディ&ジュリー・ミラー(5位)、どちらもラリー・キャンベルの活躍が光っていますね。で、レヴォンも、キャンベルも元を辿ればボブ・ディラン(6位)のバック・バンドの出。ちなみにバディ&ジュリーはレヴォンの前作「DIRT FARMER」でコーラスを付けている。さらにバディ・ミラーとジム・ローダーデイル(9位)は盟友のような仲で、近年も共演を重ねています。なんか私のベストアルバムはこの辺りの人脈総ざらいのようになっていますが、正直、この辺りを聴いていれば、「ルーツな日記」的に鉄板なのです!