ルーツな日記

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グラミー特集:バックウィート・ザディコ

2010-01-30 12:47:25 | ソウル、ファンク
BUCKWHEAT ZYDECO / LAY YOUR BURDEN DOWN

確か一昨年度あたりに新設された部門、『Best Zydeco Or Cajun Music Album』部門。ルイジアナ独特のダンス音楽、ケイジャン、そしてザディコ。どちらもアコーディオンを主体とする土着性の高い音楽。白人がやるのがケイジャンで、黒人がやるのがザディコと呼ばれます。ま、一概には言えないかもしれませんが、ケイジャンにはフィドルが入るのでよりカントリー色が強く、ザディコには黒人ならではのパーカッシヴでうねるような躍動感がある、そんな印象です。現在のケイジャンを代表するのがボーソレイユ、そしてザディコの第一人者がバックウィート・ザディコです。そんなケイジャン&ザディコのノミネートは以下の通り。

Beausoleil Avec Michael Doucet / Alligator Purse
Buckwheat Zydeco / Lay Your Burden Down
The Magnolia Sisters / Stripped Down
Pine Leaf Boys / Live At 2009 New Orleans Jazz & Heritage Festival
Cedric Watson et Bijou Créole / L'Ésprit Créole

ニューオーリンズ音楽に目がない私といたしましては、ケイジャン&ザディコも大好きなのですが、なかなかそれ単体のCDを買うことはないんですよね~。そもそもあまり日本に入ってきませんし…。で、このノミネート作も一枚も持っていませんでした。せっかくだからどれか一つ買おうと思い、バックウィート・ザディコを選びました。ボーソレイユと迷ったんですけど、ジャケ写が断然こちらの方にインパクトがあったので!

このジャケ写を見ると、王道のザディコをやってるように思うじゃないですか。ラヴボード(ウォッシュボード)のリズムに乗って軽快にアコーディオンを弾きまくるような。ところが1曲目「When The Levee Breaks」はロック度を増したネヴィル・ブラザーズみたいなミクスチャー・ファンク。ツェッペリンのカヴァーで有名なメンフィス・ミニーのあの曲ですけど、一瞬入れるCDを間違えたかと思いましたよ。 前半、バックウィート・ザディコはアコーディオンではなくオルガンを弾いている。そしてそれ以上にスライド・ギターが全面に出ているのですが、このスライドが凄い! 誰かと思えばサニー・ランドレス! 終盤になってテンポが倍で刻まれると同時にアコーディオンが入ってきて一気にザディコ色を増す。なんだかんだで格好良いっす。

続く「The Wrong Side」はスワンプ色を感じさせる明るい曲ですが、ここでもサニー・ランドレスのスライドが唸りをあげます。今作はオリジナル5曲とカヴァー6曲が収められていますが、そのカヴァーの選曲がなかなか面白い。1曲目のメンフィス・ミニーを皮切りに、ジミー・クリフの「Let Your Yeah Be Yeah」、ブルース・スプリングスティーンの「Back In Your Arms」、さらにキャプテン・ビーフハートの「Too Much Time」ですから。で、「The Wrong Side」もカヴァーなんですが、これは最近売り出し中の JJ GREY & MOFRO というバンドの曲で、 JJ GREY自身がコーラスとキーボードで参加しています。こういう比較的新しい曲を取り上げているところも興味深いですね。

カヴァーでもう1曲驚かされたのがガヴァメント・ミュールの「Lay Your Burden Down」。しかもウォーレン・ヘインズ本人がゲストでギターを弾いています。バックウィートはオルガンをブリブリ弾いてる。ロックです! こんなカヴァーの選曲だけでもルイジアナならではのガンボなごった煮感を感じさせてくれますよね~。

オリジナル曲ではレゲエ的なニュアンスを感じる「Don't Leave Me」や「Time Goes By」などでの朗らかな曲が良いですね。今作はジミー・クリフのカヴァーがあったり、スプリングスティーンの「Back In Your Arms」もレゲエ・アレンジだったりで、カリブな雰囲気が割と強く感じられるます。でもそれにアコーディオンの音色がまた合うんですよね。バックウィートのヴォーカルもルイジアナらしい人懐っこさがあって、なんか和みます。

残念ながら私の期待した、これぞザディコ!なアップ・テンポの曲は「Throw Me Something, Mister」ぐらいですかね。ラブボードのシャカシャカしたリズムに弾力のあるアコーディオンの音色が踊る。やっぱこれですよね! 「マルディグラ!」っていうコーラスにも胸が躍ります。最高です! 「Ninth Place」もテンポは遅めですがザディゴの魅力が味わえますね。最後はスローなインスト・ナンバー「Finding My Way Back Home」でほっこりと終わります。

想像していたものとは大分違いましたが、そんな驚きも込みでかなり楽しめる好盤です。ザディコも奥が深いなと…。


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