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『永遠の0』その12(戦地の娯楽事情)

2015年07月10日 | O60→70(オーバー70歳)

【273~282ページ】
宮部さんは碁が好きでした。なんで、忘れていたんやろう。---
警備兵の仕事が大変なのは出撃前と出撃後です。でも、それ以外はわりに暇な時間があったんです。昼食後、午睡の時間になると、整備科兵舎の庇が作り出す日陰の下で、各科のの将棋好きや碁好きが集まってきました。もっとも18年になると、のんびりと碁を打つような余裕はのうなりました。---
「歯が立たない」
少佐は言いました。
「宮部1飛曹は専門家について勉強したのか」
「はい、瀬越憲作師に学びました」
「瀬越師か。呉清源の師匠だな」---
少佐はそれ以上は聞きませんでした。そして、石を片付けると、
「有り難う。大変、勉強になった。また機会があれば、ご指導をお願いします」
と言いました。宮部さんは深く頭を下げました。
しかし2度目の対局はありませんでした。2週間後、日野少佐は艦隊勤務に転任となって駆逐艦「綾波」に挑戦し、その年の暮れに行われたガダルカナル島砲撃の夜戦でで艦と運命を共にしました。
〔ken〕亡き父と囲碁をした時があります。「いつ覚えたの?」と聞いたら、戦争中、銃口でボール紙をくくり抜き、墨汁を塗って黒石がわりにしたそうです。私が「そんなことしてたから、戦争に負けたんじゃないの?」と言うと、父は「そのぐらいの休憩時間はあったんだ」と、少し表情を曇らせてつぶやくように話しました。父の碁は、接近戦を好む下手なケンカ碁でしたが、今ではいい思い出なのです。
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