息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

死亡推定時刻

2014-07-27 10:49:44 | 著者名 さ行
朔立木 著

山梨県の有力者である渡辺土建の社長・渡辺恒蔵は
遅く出来た一人娘・美加を溺愛していた。
その美加が誘拐された。
妻・美貴子の懇願もあって身代金一億円を支払えという要求に
応じようとする恒蔵だったが、警察の指示によって受け渡しは
失敗した。

美加は死体となって発見された。
犯人は出来心で財布から現金を抜き出した男とされ、
ろくな弁護も受けないままに死刑が言い渡された。

しかし、国選弁護人の川井はその無実を信じ、判決を覆すために
戦いを挑む。

前半の恒蔵のワンマンぶりや、一方的な犯人確定の過程は
読んでいて気持ちが悪くなった。
しかし、それを理解したうえでないと、後半のスリリングな
展開は楽しめない。嫌だけど。
川井の骨身を惜しまない調査や聞き取り、戦いぶりは爽快そのものだ。
しかし、経済的な大変さや先の見えない戦いを考えるとため息も出る。
流石に現場を熟知した著者だけあり、臨場感抜群。
その反面、犯罪捜査にはこんなことが日常茶飯事なのかと恐ろしくなる。

そして結局は身近な人間関係に秘密が隠れていたというやりきれなさ。
人間って納得いかないままに進んでしまったとき、もっとも強力な
負のエネルギーが爆発してしまうのかもしれない。

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