息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

精神科ER 緊急救命室

2011-04-22 20:46:17 | 著者名 は行
備瀬哲弘 著

精神科にERがあるとは知らなかった。
いや、当然あるはず、というかなくてはならないのだろうが、
このような形で存在することを知らなかったのだ。

東京府中病院の精神科ERで勤務した3年間の経験を、豊富な事例
をもとに、わかりやすく解説している。
過酷な長時間勤務。食事もままならない医療現場で、身体の拘束を
しなければならないほどの急性の患者が担ぎ込まれる。
考えただけでも大変な仕事だ。
しかも、どうも医師の中でも精神科の立ち位置はあまりよくないらしい。
その苦労は察して余りある。

そんな中で根気強く患者を納得させ、家族を説得し、恐怖や驚きに共感し、
助けの手を伸ばす。
しかし、それがうまくいかず、投影性同一視という状況に陥った経験も
語っている。こころの問題だけに、自他の線引きは重要なのだ。

著者が医師になるきっかけとなった「さとうきび畑」が心に残った。
とてもかわいがってくれた隣家のおじさん・おっとー。
沖縄戦で不自由になったおっとーの足を治してあげるよ、と言った子が
本当に医師になる。その前に別れは来てしまったけれど、愛情をいっぱい
受けた子ども時代が、温かい人柄をつくったのだなあと納得した。

自分自身がなんだかつらいとき、つらそうな誰かを支えたいとき、
精神科や心理学をテーマにした本を読む。
これで解決するわけでも誰かの助けになるわけでもないけれど、
なんとなく気分が楽になる気がする。

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