息をするように本を読む

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未解決―封印された五つの捜査報告

2013-10-02 11:29:58 | 著者名 あ行
一橋文哉 著

大きく社会を騒がせた事件には、解決しないままに時がすぎてしまった
ものも多い。三億円事件などその代表的なもので、さまざまな分析や解釈が
行われ、映画や小説やドラマにもなった。

しかし本書で紹介されている5つの事件は、解決したものもある。
思わず調べ直してしまった。まあ、自殺とされたライブドア事件は
それに納得している人の方が少ないであろうから、未解決かもしれないが。

・住友銀行名古屋支店長射殺事件
・八王子スーパー強盗殺人事件
・豊田商事会長惨殺事件
・ライブドア「懐刀」怪死事件
・神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)

どれもああ、と思い出せるものばかり。興味深いし、熱意をもって読んだのだが、
前半は大阪弁のその筋系インタビュー記事に辟易した。
わかります。だって根本的に「闇社会」が関わるんだもんね。切ってもきれないよね。
リアリティを出すための話し言葉なんだろうけれど、そこ意識しすぎてない?
いや、後半の関東の言葉だって、なんかとってつけた感の話し言葉だけど。
なんていうか、週刊新潮「黒い報告書」みたいなくどさ。

あと話の広がり方が見えづらく、もともとの軸を見失いやすい。
あえてこういう書き方で読者をけむにまいているのかもしれないが、
内容いかんではなく、すらすらと読み進めるということがしづらい。

そこをじっと耐えつつ読み進めると、「闇社会」の怖さがしみじみと伝わる。
金融も政治も、そこに金がある限り「闇社会」のては伸びてくるし、
利用しようとして取り込まれる者が出てくる。
この人脈とかつながりとか、私がもっとも苦手とするものであり理解しづらいが、
それをしっかりと把握しなければこんな世界で生きていくことは不可能なのだろう。
ひたひたと忍び寄る「闇社会」と、それを見ないふりして構成される表の社会。
ひとつのつまずきが無関係の者まで巻き込む殺人にまで転がっていく。

ひと味ちがうのが最後の「神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)」。
これは被害者の父、犯人の両親の手記、周辺記事、その後の治療歴などを
かなり読んだことがあるので、また違う切り口が面白かった。
犯人がいまどこにいるか、という件は本当に噂が錯綜していた。
実際治療が功を奏したのか、という事自体が不明であり、今実験中のような
ものなのだから、周囲の人が不安を抱くのは無理もない。その反面、莫大な
予算と人員、きめ細やかな配慮を受けて社会復帰のお膳立てをされた彼に
反感を持つ人が多いのも事実。少年院卒業生の不満もわかる。

しかし、これも未解決じゃないなあ。

面白くないことはない、でも期待した方向の本ではなかったなあ、ということか。

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