息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

ちょちょら

2013-09-18 10:48:31 | 畠中恵
畠中恵 著

ビジネス小説だ。下手なノウハウ本よりもすごい。
舞台は江戸時代であるがどう仕事をしていくか、どう自分の藩を有利にもっていくか、
そのための捨て金、接待、人脈などなどを駆使し、自分自身の能力を磨く。
そこにはお役の先輩があり、上司がいる。

現代よりもさらに賄賂や付け届けが堂々とまかり通るだけに大変だ。
金がなければ身動きはならず、かといって金があればよいというものでもない。
生きた金を使い、最大の利益をもたらすために各藩には江戸留守居役という役職があった。

兄の急死、留守居役の出奔という事件があり、まるで棚からぼた餅のように
主人公・間野新之助は部屋済みから役付となった。
彼は兄の死の真実、先輩留守居役であり、かつあこがれの女性そして兄の婚約者であった
千穂の父の行方を追うため、役目に立ち向かうが、そこには想像を絶する難問があった。

他藩とはいえ、組合を同じくする留守居役の先輩たちが、新之助を鍛えるさまには
企業の新人研修のような愛情と厳しさが感じられる。
遊びまでもものにしなければ、相手より優位にたつのは難しい。
これは将軍の妻になった『天璋院篤姫』でも出てきたなあ。

数多く登場する侍たちもそれぞれに魅力的。ことに美丈夫で遊びにも長けた岩崎には
新之助はまったく頭があがらない。

と、思いきやお手伝い普請という高額の出費から逃げるために知恵を絞り、考えられない
方法で目標を遂げた新之助。その成長と活躍はすがすがしいほどだ。

舞台も環境も異にしても、仕事に取り組む真摯さは共通。
いま、ビジネスというにはのんびりすぎるところに身を置いている私には
面白くて夢中になりながらもやや辛いものがあった。

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