息をするように本を読む

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と、なんだかだらだら日常のことなども

とっても不幸な幸運

2012-04-18 10:45:31 | 畠中恵
畠中恵 著

新宿にある「酒場」という名の酒場。
とっても入りにくくて常連ばかりが集うが、料理がおいしく調度品もいい。
ある日この店に持ち込まれたのが100円ショップで売られていたという
「とっても不幸な幸運」という名の缶詰だった。

これを開けたとき、その人にとって文字通り“とっても不幸な幸運”の
物語が始まる。
この缶は量産されているらしく、個性ゆたかな店の常連たちが次々と
持ち込んでくる。今の暮らしを少し変えたい、満足できないという
ささやかな欲望にとても見合っているようなのだ。

缶が開いた時に見えるものは人それぞれ。そこから始まるものも
人それぞれ。6つの物語がオムニバス形式で語られる。

常連は男ばかりなのだが、マスターの娘・のり子が加わることで
若さと華やかさがプラスされ、男たちの行動にもやや遠慮がみえる。
何しろ遠慮のないときのこの人たちときたら、アンティーク家具は
崩壊し、グラスはかけらとなり、殴り合いなど日常茶飯事なのだ。

最後をしめくくるのは「酒場」のルーツの物語。
ちょっと切なく、そして微笑ましい過去を知るともっと酒場が好きになる。

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