息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

贖罪

2012-10-12 10:43:25 | 著者名 ま行
湊かなえ 著

ドラマ化もされた作品。お約束ですが見てないです。
もんのすっごいファンタジーとか思い入れのある俳優がやるとか、
よほどのことがない限り映像はあんまり見たくないのだなあ。

15年前のお盆、静かな田舎町で起こった少女殺人事件。
犯人を目撃していたのは4人の少女。しかし誰も顔を覚えていないという。
事件は解決しないままいたずらに時間ばかりが過ぎていく。
被害者・エミリの母親は苛立ち、4人に対して呪詛とも思える言葉を残して
東京へと去っていく。

4人がそれぞれそれからの日々を語っていく。
空気がきれいなだけがとりえの小さな町。
その窒息するような空間で、見えない殺人鬼に怯えて暮らす日々。
それは彼女たちにとっても苦しみの時間だった。

冒頭の「フランス人形」で語られる紗英はその狭さ息苦しさをもっとも
感じて生きてきた。東京へ出てきたときの開放感の表現などは、
胸に突き刺さるように伝わってくる。
「PTA臨時総会」の真紀は現場からただひとり脱走した罪の意識から、
よりしっかりものを演じ、好きでもない教師になり悲劇に巻き込まれた。
「くまの兄妹」の晶子は自分が都会的なエミリと親しんだことを、
身の丈以上のものを求めては不幸になる、という祖父の言葉と重ね、
引きこもった。
「とつきとおか」の由佳は、事件当時の母親の対応と姉に対する
コンプレックスから非行に走る。

誰もが重い荷物を抱えた年月。

それなのに呪詛の言葉を吐いたその当人が鍵を握っていたとは。
エミリの一家はまさに作りもののバービー人形のような家族だった。
ショッキングな結論とそこに至る構成はさすがにすごい。
しかしひとりひとりの告白に散りばめられたエピソードの緻密さ、
リアルさに驚愕する。