息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

BG、あるいは死せるカイニス

2012-10-07 10:07:45 | 石持浅海
石持浅海 著

全ての人間が女性である社会。
出産を経て男性化するのが通常だが、これは一部の選ばれし存在だ。
主人公・遥の姉優子は、男性候補の筆頭といわれる優秀な生徒だった。
しかし流星群の夜、天文部の観測に出かけたはずの学校で殺される。
しかもレイプ未遂の形跡を残して。

男性が極端に少ないこの世界において、女性がレイプされることは
考えられない。謎が謎を呼ぶ中、優子の後継者とも言われる現・天文部長の
小百合が殺害された。

トンデモな設定に見えるが、きちんとした構成なのでそんなに違和感はない。
ただ、ちゃんと頭に入れて読まないと何がなんだかわからなくなる可能性はある。

天文部の部員たちに語られる都市伝説「BG」は優子が残した言葉でもある。
その正体は誰にもわからず、ただ飛び抜けて優秀な男性を指すことだけが
暗示されている。

国家がからむ研究にまで話は広がり、男性化は自然におこる単純なものだけでは
ないことがわかってくる。

男性は優秀なもの、という思い込みがこの世界に広がっているのだが、
そこにはそう思い込ませて保護し、利用するという政治的な目論見が透ける。
子孫繁栄のため、給与を上げ暇な部署に異動させる。
いいことばかりのようだが、その反面で仕事でのチャンスや、人間的な成長の
機会は奪われる。
役割分担が違う意味で機能しているのだ。これって皮肉だよなあ。

目線を変えることで、まったく違うものを見せてくれる物語だ。