息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

クロワッサン症候群

2012-10-10 10:23:21 | 著者名 ま行
松原惇子 著

またまた古い作品なのだが、バブルの頃を境にした女性の考え方とか
時代の変化を語るにはこれは必須かなということで。
正確にはバブル前。社会に出る女性が増え始めた頃だ。
普通に働くということが女性にとって気力を必要とした時代があったのだ。

不況で仕事を得ることも難しい時代に何を、と言われるかもしれないが、
結局正社員でずっと働き続ける、というパイはさほど多くないという現実は
続いているのだろうなと思う。

団塊の世代あたりで“会社員”とその家族という形が確立されて、成人男性が
正社員の立場を独占していた。当然女性は腰掛け扱いで、職場の花に過ぎず、
新陳代謝を求められた。
バブルの頃に女性も同等に、と正社員として働き続ける選択肢が増えたが、
別に世界が一気に変わるわけではない。
そのぶん会社のキャパからあふれた人が派遣に流れた。
いつのまにやら若いから、男性だから、既婚だからといって正社員になれるという
可能性がなくなっていった。ついでに言えば、使えないけど長い目で見るか、
というのもめんどくさいのでなくなっていった。
途中で技術の伝達とか指導力の養成とか欠けているものに気づいて愕然としたが、
機械とか外国の人材とかもあることだし、見なかったことにした。
私の個人的な思い込みで申し訳ないのだが、こんな流れのような気がする。


1977年5月に創刊された雑誌「クロワッサン」はもともと「ふたりで読むニュー・
ファミリーの生活誌」として創刊され、わずか一年後に「新しい女性の生き方」に
着目した雑誌になるというものすごい迷走をしている。なのに当たった。

モデルがあると進む方向がイメージしやすい。本来は先輩やトップランナーに
あればいいが、当時それは皆無だった。
かと言って、雑誌にそれを求めるのも短絡的だと思うが、現実にはそんな人が
多かったのだ。
その姿を追ったのがこの作品だ。

恵まれた環境にありながら幸福を感じられない姿には、みえない青い鳥を探し
求める子どものような不安さがある。
未来が見えない今の時代にもそれはあるのだが、本書に登場する女性たちは
自分の価値観だけでなく、世間や親の目、常識などに責められている気がする。
これって私自身の過去の姿でもある。

今は大変な時代だと思う。バブル真っ盛りは確かに楽をした人もいたと思う。
でも、この自由や豊富な選択肢はなかったのだ。
うまくいくことばかりではないけれど、時代は少しでも進んでいる。
少しでも明るい要素が増えて、幸せを感じる人が多くなればいいと思う。