息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

窓際の死神

2011-02-14 20:49:40 | 柴田よしき
柴田よしき 著 

死神〈アンクー〉の姿を見ると、自分か、その愛する人が死ぬ。

きれいになれないと思いつつもダイエットのために、塩むすびひとつを
持って出社する日々。
同じひとを愛した女性の死を願う自分を嫌悪する女性多美。
文字通りの窓際族、主任の島野に相談したところ、彼は自分が
死神なのだと告白する。

女性の幸せは金銭的な豊かさとそれをもたらす結婚と考え、高校生のときから
努力を重ねてきた麦穂。ささいなきっかけから愛人生活に陥り、小説の投稿のみが
心の支えとなっている。それなのに、同僚が新人賞一次を通過してしまった。
やけになって会社を辞めた麦穂は、アルバイト先でさらにショックな情景にあう。
そんなとき、死神を名乗る島野という男に出会う。

不思議な死神と、「おむすびころりん」「舌切り雀」というむかしばなし。
おかしな取り合わせだが、物語が進むにつれ、つながりがわかる。

こうありたいと思ったのに、一生けんめい頑張ってきたのに、どうしてもうまく
いかないときはあるし、苦しいときもある。
そんな心の闇を映し出し、シビアにでもやさしく描き出した作品だ。