息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

百人一首の作者たち

2011-02-06 10:27:59 | 著者名 ま行
目崎徳衛 著

ぼーっと百人一首を眺めるのが好きだ。
音声で聞くのも悪くない。
かるたも持っているし、CDだってついている。
ただ、ゲームとしてのかるたは高校以来やったことがない。
子どもとちょこっと遊んだくらい。
何しろ、上の句→下の句って瞬時につながらないもの。

でも、文庫本の百人一首をいつも眺めているのだ。
きれいだなあとか、季節にあうなあととかぼんやり考えながら。


白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける

心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花

個人的にはこのあたりの抒情的というか、情景が目に浮かぶような歌が好きなのだが、


あひ見てののちの心にくらぶれば むかしはものを思はざりけり

かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしも知らじなもゆる思ひを

などは、あまりも情熱的で、現代の刺激的な言葉でもこれほどの強さを
ダイレクトに表現することは難しいのではないかと思う。

そして、この本は王朝文化の在り方や人間模様、それぞれの作者が置かれた
立場や状況を解説し、関連する多くの歌を「古今集」や「後撰集」などから
紹介している。
百人一首にかかわるあらゆる宝物を詰め込んだ贅沢な一冊だ。

百という数もちょうどよいのかもしれない。飽きるには多く、忘れるには少ない。
季節を盛り込み、恋を語り、身の不遇を嘆き、世を救おうと思う。
教養など程遠い身であるが、これからもずっと繰り返し眺め、楽しむであろう本だ。