息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

屍鬼

2011-02-12 08:33:24 | 小野不由美


小野不由美 著

外と切り離された地形の小さな集落。
もう静かに滅びていくのかと予感させるようなこの地に、不思議な洋館が建つ。
そこから始まる恐怖の物語は、善と悪、敵と味方を曖昧にしていく。
排他的な人々は当然最初のうち、新入りの家族に否定的だ。
それをうまく取り込み、少しずつ入り込み、やがてはすべてが奪われていく。

不思議な死の連続、よみがえり、そして真実が暴かれると、そこは“狩り”の場へと
変わっていく。

文庫で5巻という長い長い物語なのに、まったく飽きさせない。
1巻、2巻までは、村里のほのぼのした感じや人々のつながりの温かみなどがある。
それを下敷きにしたうえで、次々と事実が暴かれ、戦い、争いなど激しい場面へと
変わっていくのだ。
実にドラマティックで、読みごたえ抜群。

生と死、人と鬼、重いテーマでありながら、エンターテインメントとしても完成
している作品だ。