小野不由美 著
外と切り離された地形の小さな集落。
もう静かに滅びていくのかと予感させるようなこの地に、不思議な洋館が建つ。
そこから始まる恐怖の物語は、善と悪、敵と味方を曖昧にしていく。
排他的な人々は当然最初のうち、新入りの家族に否定的だ。
それをうまく取り込み、少しずつ入り込み、やがてはすべてが奪われていく。
不思議な死の連続、よみがえり、そして真実が暴かれると、そこは“狩り”の場へと
変わっていく。
文庫で5巻という長い長い物語なのに、まったく飽きさせない。
1巻、2巻までは、村里のほのぼのした感じや人々のつながりの温かみなどがある。
それを下敷きにしたうえで、次々と事実が暴かれ、戦い、争いなど激しい場面へと
変わっていくのだ。
実にドラマティックで、読みごたえ抜群。
生と死、人と鬼、重いテーマでありながら、エンターテインメントとしても完成
している作品だ。