息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

シンデレラ・ティース

2011-02-13 11:29:15 | 坂木司
坂木司 著

あの「ホテル・ジューシー」の夏、ヒロちゃんの友人、サキはどう過ごしたか?

子どもの頃の経験から、苦手で仕方がないはずの歯医者でバイトをすることになったサキ。
おっとり育ちのよさそうな主人公にぴったりの、おだやかであたたかい職場だ。

とはいえ、苦手な場所での初めての仕事。失敗もあれば、発見もある。
謎めいた患者が来ることもある。
それを分析し、解決していく無口で仕事熱心な歯科技工士に、いつしか心惹かれていく。

坂木司らしい軽やかな謎解き。いかにも女子大生のバイトがテーマのお手軽な感じと
思わせておいて、ああ、じっくり勉強したんだなあ、取材したんだなあと思える。
というのは、あとがきを読めば裏付けられる。

歯は本当に大切だ。意識の高い時代になってから生まれた人は幸せだと思う。
二度と戻らないものだから。気軽に虫歯をつくっていた過去がくやしい。
だから、大人になってからは意識して定期検診をし、クリーニングをしてきた。
子どもの歯には徹底して気を配り、どうにか虫歯なしで永久歯列がそろった。
もし歯並びが悪かったら矯正即決のつもりであったが、幸いその必要はなかった。
すごいお嬢様でも歯並びが悪いとがっかりなのに、凡人ならなおさらだ。
ああよかった。

サキも最終的には歯科検診と虫歯治療を受けるまでに、歯医者嫌いを克服する。
顔にあるから、よく見えるから、そして食べ物を取り入れるための大切な器官だから、
歯から受ける精神的な影響も大きい。
気持ちよく笑うために、おいしく食べるために、大切にしなきゃなあ、と素直に思えた。