哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

高齢者行方不明

2010-08-03 22:50:50 | 時事
 池田晶子さんなら、絶対取り上げたであろう話題だ。

 行方不明とは、生きている前提での言葉である。しかし、住んでいるとされるところが更地であったり、家族が言うには20年前に出て行った等、100歳以上で今も生きているとは必ずしも思えない状態が多く見つかっているらしい。しかし、死亡したとは決して言えない。死体が見つかっていないからだ。この騒動のきっかけとなった事例は、自室で30年以上白骨化したままだったそうだが、家族がドアを閉めたままで死体を見なかったことにしておけば、生きていたことになっていたわけである。

 ここで、池田さんは「死」とは何かと必ず問う。「死ぬ」とはその人が「いなくなる」ということだが、「いなくなる」=「無になる」とはどういうことか。


「なるほど、その人は死体となって、その人の肉体はなくなったけれども、「その人そのもの」は、ではどうなったのか。・・その人は死んだ、彼はいなくなったと当たり前に言う、しかしそれは正確にはどういうことなのか、考えるとじつは誰にもわからないので、それで、とりあえず、肉体の消滅をもって死とするということに「決める」のである。死とは、社会的な取決め以外のものではないのである。」(『ロゴスに訊け』「すべての死者は行方不明」より)