哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

資本の団結

2011-01-09 02:44:00 | 時事
 ちょうど前回の卯年の正月に書かれた池田晶子さんの文章に面白いフレーズがあった。



「人々が「絶望的」と言っている内実の主たるものは、やはり、「金融」と「経済」のことなのだろう。私は、この領域にまるきり不案内なので、いかなる理由によってそれがそうなるのかをよく把握していないが、銀行が潰れ、失業者が増え、という街中の成り行きを見るだけでも、やはりこれは大変なことなのだろうということはわかる。
「万国の労働者は団結しなかったけど、万国の金は団結しちゃったんだよねえ」
とは、知人の言である。この人、証券会社の元会長さん」(『考える日々Ⅱ』「団結したのは資本であった」より。以下引用文も同じ)




 確かに思い起こすとこの頃は大変であったはずであるが、さらにこの後日本も世界ももっと大変なことになったのは周知のとおりである。同時多発テロから局地戦争へ、またリーマンショックによる世界的な不況、国家財政の破綻の危機にある国々など。一方で新興国による経済成長もあるとはいえ、世界的には不安定な状況に変わりはない。しかもアメリカでも日本でも政治上の大きな変化があり、期待と失望の落差が影を投げかけている。


 池田さんがよく書いている世界的な「一連托生」的事態は、インターネットやらでより強固になっているように思えるが、結局人間の側はもとから何も変っていないという指摘は至極真っ当に思う。「いくら世界が機械化と情報化をきわめたところで、人間の条件は、何ひとつ変わってはいないのである。」という池田さんの言葉は、確かに全くその通りであることに、今更ながら驚く。

 人間の側が変わりようがないだけでなく、直面している事態も変化はしたものの、大して変わりはない事態であることに更に驚く。いやむしろ悪化したとすれば、一体12年間人類は何をしてきたのだろうかということになるのだろう。なにせ、上に引用した12年前の池田さんの文章がそのまま現在を表現していたとしてもちっともおかしくないのだから。

 「人間は、何のために、何をしているのだろうか」という池田さんの言葉を改めて自省したい。