かたつむり・つれづれ

アズワンコミュニテイ暮らし みやちまさゆき

大黒屋光大夫

2015-11-04 20:57:35 | 鈴鹿川流域の暮らし

鈴鹿市の広報に「大黒屋光太夫記念館特別展ーー井上靖

「おろしや国酔夢譚の世界」が10月24日からありますよ、

と紹介してあった。

鈴鹿に引っ越して来て、6年目、光太夫さんの名前は聞いて

いたし、白子港に行くとなにやら立派なモニュメントが天に

向かって、佇立ししてるのに出会う。井上靖さんの文学碑が

あることも知っている。

文学碑は読んでいる筈だけど、そこから何か受け取っている

ものはない。

光太夫さんの記念館があることは、知っていたけど、行って

みたいとも思っていたけど、足が向いていかなかった。

それが、何を思ったか、二度目の死に損ないの体験が影響

したか、「行ってみよう」と妻と次男坊に声かけた。

 

25日の夕方、次男坊の運転で出かける。

駐車場には、車が一台も無い。

「閉館してるかな」と思いきや、やってそうだ。

人っ子ひとりいない、記念館は不気味だったけど、ドアを

開けると、受付には一人、女の人がいた。

展示室には、靴は脱いで、スリッパに履き替えて、入った。

 

光太夫らが1783年1月、白子の浦を出港して、嵐に遭い、難破して

アリューシャン諸島のアムトチカ島に漂着した。そこで4年を過ごし、

そこから、カムチャッカ~オホーツク~イルクーツク~ペテルブルグ

に辿り着く。そのルートが年月入りで、地図の上に書かれてあった。

帰りも、同じルートをオホーツクまで戻り、そこから根室に上陸したの

だった。1792年5月と記されていた。

地図上では矢印の線で引かれている。見ている、こちらは、「そうか、

すごい旅をしたんだなあ」と少し、関心が向く。

 

実は、何年か前、本屋を散策していたら、文庫本で井上靖の「おろしや

夢酔譚」が目に入り、何そのとき、魔がさしたように新品を買っていた。

最初のほうだけ、読んでいまは本棚に眠っている。

 

特別展は井上靖の手書きの原稿が、物語の流れに沿って、展示して

あった。その一つひとつを読んで回った。

妻と次男は、早々と受付の前にある長椅子に座って、ぼくが終わるの

を待っているようだった。

最後まで、読んできて、「ふーっ、ちょっと疲れたなあ」

周りを見回す。椅子があったらなあ、と思った。ちょっぴり、感慨に

耽りたかった。

そんなに長いこと居たわけでなかった。

ちょっと、物足りない感じ。

「海に行ってみよう」

 

海岸は風がきつかった。身体には堪える感じだったので、早々に

引き上げた。

 

あとで、あの記念館、海が見えるように作られていたら、いいんじゃない

か、と思った。

 

もっと知りたいとうのが、ムラムラと起こってきた。

「おろしや夢酔譚」の最終章を、わが家に戻って、一気に読んだ。

江藤淳が、この本の解説を書いていて、それも読んだ。

<「いいか、みんな性根を据えて、俺の言うことを聞けよ。こんどは

人に葬式を出して貰うなど、あまいことは考えるな。死んだ奴は、

雪の上か凍土の上に棄てていく意外仕方ねえ。むごいようだが、

他のすべはねえ。人のことなど構ってみろ、自分の方が死んでしまう。

いいか、病気になろうが、凍傷になろうが、みとりっこなしにする」・・・>

江藤淳は、ここがこの小説の核をなす部分だといっている。

 

後で、特別展のための小冊子を見ていたら、光太夫が帰国したあと、

異国体験をしてきた光太夫らの消息が知られていなくて、”不遇”な

生涯という評価があったらしいけど、鈴鹿の光太夫ゆかりの寺院とか

から、新資料が発見され、故郷鈴鹿にもやって来て、世話になった人

との再会も果たせたとか。

小冊子には、そういう経緯が明るみに出るに合わせて、井上靖さんが

文学碑を推敲していく過程が紹介されている。

 

おそらく、最終の文学碑の文章。

 

 

漂流民は、光太夫の前のもロシア地域に5回、本人たちの意志では

なく、国という枠からはみ出した。その人たちは、帰国は適わなかった。

光太夫は、時代の背景や光太夫の資質も加わって、国からいったん

はみ出したが、再び戻った。それが、どういことだったか、いまの

ぼくにはわからない。関心はある。

その後のジョン万次郎との比較もあるようだけど、そのこともしらべたら

おもしろそうだな。

中東から多くの難民が国と言う枠からはみ出して、おおきなうねりに

なっている。

国という枠が先ずあるというより、まず、一人ひとりの人間がいる。

それが、実際に見える。

一人ひとりの艱難がどういう方向を目指しているか、時間があれば、

光太夫物語も、読んでみたいなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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