台風21号が東海地方に接近している。
何日か前から雨が降り続いている。
22日夕方、娘がやってきた。
「ああ、もうあのセゾン小林、あぶない」
アパートの南側の水路が連日の雨で増水して、あふれて、
前庭が浸水したら、床上浸水はまぬがれない。
「今回、そんなことになりそうなの」というわけだ。
娘のアパートとわがマンションは、目と鼻の先だけど、
アパートは水路に面していて、前庭には芝生をはって、
いってはなんだけど、ボロアパートにしては優雅に
暮らしている。ときに、そこでBBQしたり、お月見したり。
「ああ、今晩はこっちで寝たらいいわよ。布団ならいろいろ
出したらあるから」と妻。心強い。
「じゃあ、晩ごはんは食べて、その後来るわ」と娘。
「オーケー」
ベットで休んでいたぼくに聞こえてきた。
わが家の夕食は、豚のしゃぶしゃぶ。タレに注意すれば、
減塩しやすいメニュー。
鍋物はいい。なんか、ほっこりする。
そとは、雨が相当降っているらしいが、部屋の中は静かなもの。
8時を過ぎたら、衆院選の開票のニュースがテレビではじまった。
台風情報も間に挟まる。
娘ら8時過ぎても来ないので、妻がラインした。
「そうよ、ふゆがレストランのバイトに行っていて、迎えに
行って来たところなの。今から行くわ」ということだった。
また、何でこんなとき、バイトに行くかね。
分からんでもない。
子どものころでも、台風が近づいているなんて、ラジオで
聞いていると、怖さと、それと同じくらい好奇心というか
ワクワク感があったのを思い出す。
そんなときって、ジッとしてられないような気持ちになるんだよな。
ふゆがどんな気持ちだったかは分からないけど。
9時近く、娘一家がやって来た。
さっそく、寝場所づくりがはじまった。
ダイニングキッチンのテーブルを端に寄せて、床にマットを
敷き、あちことから集めた敷布団をしきつめた。
けっこう、広い。こんなふうに使えるんだ。
孫のふゆと晴空は、修学旅行の寝る前をほうふつとさせる
はしゃぎたいけど、じっとしていたいけど、でもやっぱり
はしゃいでしまう。ケラケラ笑いながら、ママに絡んだり、
姉と弟でじゃれていた。
居間はそのままにしたので、テレビで開票のニュースも
それぞれやってきたり、出て行ったり、「そこ、座りたい」とか
言いながら、見ていた。
「晴空は、政治のことは分からないと思うけど、戦争するのはいやだ、
というのよね」と娘。
「怖いんだって」
ぼくは、10時過ぎまで、すこし頑張って起きていたが、ベットに
退室。
そのうち、それぞれ床に就いていったようだ。
だんだん風も出て、嵐になっているようだ。
マンションの部屋のなかには、そういう音は聞こえてこない。
耳を澄ませていると、わずかにその様子が想像できた。
娘や孫たちとの一夜。
かけがえのない一夜かも。