2月19日に牛丸先生を偲ぶ会があった。
その会で、牛丸先生が亡くなる前に、次の講座のために
書いたメモを公開してくれた。
先生は、12月の講座のあと、つぎは宮沢賢治「黄色い
トマト」を取り上げるつもりだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/42/14/c3f1c3834513d77aa7f0acecc4f08492_s.jpg)
「黄色いトマト」
ある朝早く、小さい私は、町の博物館に出かけた。
剥製の”蜂雀”が「ペムペルという子とその妹ネリ」の
話をしてくれた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/7d/7d/53afe09e5898482c0200a71b0752aaf4_s.jpg)
「・・二人ともほんとうにかあいらしい子だったのに、
かわいそうなことをした」
ペムペルとネリ兄弟はトマトをつくっていた。
あるとき、黄色なトマトができた。
「にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね」
「黄金(きん)だよ。黄金だからあんなに光るんだ」
ある日の夕方、遠く遠くのほうから奇体な音が聞こえてきた。
行ってみるとみると、それはサーカス小屋だった。
サーカスの入り口でみていると、大人は黄金を出して中に入って
いる。
ペムペルはネリにいう。
「ネリ、お前はここで待っておいで。僕一寸うちまで行ってくる
からね」
戻ってきたペムペルは、木戸口で二つのトマトをだしたんだ。
番人はしばらくそれを見つめていた。
それから俄かに顔が歪んでどなりだした。
「何だ。この餓鬼め。人をばかにしやがるな。トマト二つで、
この大人の中へおまえたちを押し込んでやってたまるか。
失せやがれ、畜生」
ペムペルはすばやくネリをさらうように抱いて、そこを
逃げ出した。
みんなの笑い声が波のように聞こえた。
これが蜂雀のお話。
「牛丸先生のノートから」
二人だけの幸福の象徴、黄色のトマトが他の世界では
通用しない。そのために味わった、とりもどしのきかない
かなしみ。
子どもの考えることが大人に通じないことがある。
そのときの大人の対応によって、深く傷つくことがある。
それがずっとひきずられて生きていくことがある。
恐ろしいことである。
「感想」
黄金が現実で、黄色いトマトはフィクションにすぎない
のだろうか。
黄色いトマトは、子どもの間だけ、通用するものなのか
どうか。
人間を人間たらしめるもの。
牛丸先生から、いまの時代、詩を書いてほしいと遺言されて
いるように受け取っている。
その会で、牛丸先生が亡くなる前に、次の講座のために
書いたメモを公開してくれた。
先生は、12月の講座のあと、つぎは宮沢賢治「黄色い
トマト」を取り上げるつもりだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/42/14/c3f1c3834513d77aa7f0acecc4f08492_s.jpg)
「黄色いトマト」
ある朝早く、小さい私は、町の博物館に出かけた。
剥製の”蜂雀”が「ペムペルという子とその妹ネリ」の
話をしてくれた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/7d/7d/53afe09e5898482c0200a71b0752aaf4_s.jpg)
「・・二人ともほんとうにかあいらしい子だったのに、
かわいそうなことをした」
ペムペルとネリ兄弟はトマトをつくっていた。
あるとき、黄色なトマトができた。
「にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね」
「黄金(きん)だよ。黄金だからあんなに光るんだ」
ある日の夕方、遠く遠くのほうから奇体な音が聞こえてきた。
行ってみるとみると、それはサーカス小屋だった。
サーカスの入り口でみていると、大人は黄金を出して中に入って
いる。
ペムペルはネリにいう。
「ネリ、お前はここで待っておいで。僕一寸うちまで行ってくる
からね」
戻ってきたペムペルは、木戸口で二つのトマトをだしたんだ。
番人はしばらくそれを見つめていた。
それから俄かに顔が歪んでどなりだした。
「何だ。この餓鬼め。人をばかにしやがるな。トマト二つで、
この大人の中へおまえたちを押し込んでやってたまるか。
失せやがれ、畜生」
ペムペルはすばやくネリをさらうように抱いて、そこを
逃げ出した。
みんなの笑い声が波のように聞こえた。
これが蜂雀のお話。
「牛丸先生のノートから」
二人だけの幸福の象徴、黄色のトマトが他の世界では
通用しない。そのために味わった、とりもどしのきかない
かなしみ。
子どもの考えることが大人に通じないことがある。
そのときの大人の対応によって、深く傷つくことがある。
それがずっとひきずられて生きていくことがある。
恐ろしいことである。
「感想」
黄金が現実で、黄色いトマトはフィクションにすぎない
のだろうか。
黄色いトマトは、子どもの間だけ、通用するものなのか
どうか。
人間を人間たらしめるもの。
牛丸先生から、いまの時代、詩を書いてほしいと遺言されて
いるように受け取っている。