風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ロンドン五輪・場外戦

2012-08-13 00:03:08 | スポーツ・芸能好き
 サッカーでは、男・女ともに日本選手は善戦しました。銀メダルを獲得した女子については、言うまでもありません。澤穂希が望んだ通り、五輪の決勝という大舞台で米国を相手にするという、W杯の対決を再現する展開となり、W杯では防戦一方のようなところがありましたが、五輪決勝ではよく攻め込みました。結果は米国が五輪三連覇で、W杯の雪辱を果たしたわけですが、佐々木監督のコメントが現実をよく捉えていたと思います。「われわれは米国に強くして頂いたと言っても過言ではないと思います。米国、ヨーロッパもそうですが、米国に勝つことで世界チャンピオンになれるという思いでやってきたし、数多く対戦してもらった。(今年4月には)日本が大変な状況の中で、宮城県に来ていただいて、復興関係にも対応していただいた。わたしたちは、米国は鏡のようなチームだと思っています。」
 男子は、2大会連続でU-20W杯出場を逃し、育成世代として世界と戦うチャンスを逃した不幸な世代でしたが、スペインに勝つ金星を挙げ、準決勝のメキシコ戦でもよく戦いました。さらに銅メダルを賭けた韓国戦でも、相手は欧州や日本でプレーする海外組10名、Kリーグ組8名、その内8名が現役A代表という、韓国チームとして史上最強との呼び声が高く、確かに試合には負けたけれども、パスワークや大津や永井のスピードなど、内容では十分に勝っていたと評されました。
 さて以上の前置きを受けて、表題に言う場外戦について触れます。五輪のお祭り気分に水を差すような、一種の外交的暴挙があっさり実行されました。韓国の李明博大統領が、不法占拠する島根県の竹島(韓国名・独島)を訪問したものです。10日午後2時頃のことでした。訪問計画が明らかになった9日以降、日本政府は外交ルートを通じて中止を申し入れていました。これまで首相や閣僚級の訪問はありましたが、国家元首であり軍の統帥権を持つ大統領として、歴代の誰もが、日本への遠慮から手を出せなかったことでした。それに先立つ10日明け方に日・韓サッカーの三位決定戦があり、試合終了後、韓国の選手が、ハングルで「独島はわれわれの領土」と書かれたメッセージボードを掲げたというので、国際オリンピック委員会が調査を開始し、結局、同選手は表彰式に参加できませんでした。五輪憲章は、五輪に関するあらゆる場所において、いかなる示威活動、政治的、宗教的、そして人種に関する宣伝活動を禁じており、違反があった場合、選手の失格や資格認定取り消しの処分を定めていることによるものです。
 それにしても、このタイミングで、どうしたことでしょう。今年12月に大統領選挙を控える李大統領は、実兄の元国会議員や側近が金銭スキャンダルで逮捕されるなど政権末期のレームダック状態にあり、日韓の友好関係を犠牲にしてまで「愛国」を訴える対日強硬姿勢を示すことで求心力回復を狙う思惑からか、あるいは、ひとえに「独島を訪問した初めての大統領」を業績として歴史に名を残したい計算からか、日本支配から解放された記念日「光復節」の15日を前に行われたものと解説されます(産経新聞)。韓国のニュースサイトの一つは「韓・日サッカーは“独島代理戦”」とまで伝えていました。韓国が突っかかって来るのはいつものことですが、タテマエとしてのオリンピックの友好ムードを台無しにするようなことはして欲しくなかった。日本人には思いもよらないことであり、全く当惑させられます。
 ちょっとオリンピックを離れますが・・・自民党の石原幹事長は、昨日のあるテレビ番組で、自民党政権下ならあり得なかっただろう、というようなことを語っていました。まあ、自民党政権での対韓国外交が全て良かったとも思えませんが、ここ三年の民主党政権の対外関係を見る限り、伏線とも言える事態が続いていることは事実です。鳩山政権では、従来のルールを無視して中国の習近平国家副主席と天皇陛下の会見をごり押ししました。菅政権では、尖閣諸島を巡る中国漁船衝突事件にからみ、中国人船長を超法規的?に釈放しました。それもあってか、ロシアのメドベージェフ大統領(当時)の北方領土訪問を許しましたし、日韓併合100年にあたっては不必要な謝罪をした「首相談話」を発表しました。野田政権では、前政権の約束で、返還義務のない朝鮮半島由来の図書「朝鮮王朝儀軌」を引き渡しました。外交に不慣れ・・・では見逃すことが出来ない、いわば政治主導による負の遺産と言えます。
 最近の韓国では、明から清への覇権交代時の屈辱的な民族の経験を連想させる言い回しが出て来るようになったそうです。17世紀初めに女真族が勃興し、後に清となる後金が満州に建国された当時、朝鮮は中国の明王朝に対して従順な宗属国として仕える一方、女真族を蛮族として見下していたために、覇権を握った“後金(後の清)“から二度にわたり大規模な侵攻を受け、屈辱的な降伏を余儀なくされたことを教訓にしようとするものです。世界の覇権が米国から中国に移りつつある昨今、無条件に中国にへつらうものではありませんが、中国が韓国に対して居丈高な姿勢を見せた時に、不愉快だが中国に従うしかないといったような諦めの文脈で引用されるようです。もしそれが事実とするなら、日韓基本条約とそれに伴う諸協定で「完全かつ最終的に解決」済みの請求権問題を蒸し返したり、海外で理不尽な宣伝活動を続ける従軍慰安婦問題をさらに喧伝したりする可能性があるほか、米国がアジア・太平洋地域を重視する新国防戦略を策定したのとは裏腹に、尖閣諸島で逆の立場にある中国と連携した様々な動きが出て来る可能性もあり、日本にとっては悩ましい限りです。
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