風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

後悔しない生き方

2016-06-21 00:03:25 | 日々の生活
 一ヶ月ほど前の話になってしまうが、ニューヨークの街角に突然掲げられた黒板が話題になった。「Write Your Biggest Regret(あなたが一番後悔したことを書いて)」と記載されていて、いくらアメリカ・ニューヨークとは言え、最初はその黒板を遠巻きに眺めたり写真を撮ったりして様子をうかがうニューヨーカーが多かったようで、やがて書き込みが始まると、足を止めてチョークを手にする人も増えていったらしい。NYという人種の坩堝、あるいはサラダ・ボールを地で行く土地柄、道ゆく人種も性別も年齢も全く異なる、さまざまな人たちが書いたメッセージを想像できるだろうか。実は共通するキーワードがあったらしいのだ。
 「Not following my artistic passions. (芸術の)夢を追うのをやめてしまった」
 「Not saying “I love you.” 愛していると言わなかった」
 「Not being a better friend. もっと良い友達でいたかった」
 「Not getting involved. もっと(何かに)関わっていたかった」
という、”Not”の文字、つまり「Not~=不作為」を悔いる気持ちが圧倒的だったそうである(因みに辞書を引くと、「自分のしてしまったことを、あとになって失敗であったとくやむこと」とあるが)。NYをベースにニュース配信するWebマガジン「A Plus」と社会人向けオンライン学習プログラムを全米展開するストレイヤー大学が共同で行ったプロジェクトで、人々が黒板に書き込む様子は動画で公開されていたらしいので、今でも確認できると思う。黒板への書き込みが集まると、最後に黒板消しが手渡され、参加者たちは「もう後悔はいらない」、「自分の可能性を信じたい」などと話しながら、たくさんの「後悔」を消して行き、真っさらになった黒板に最後に「Clean Slate 新しく出直そう」と書かれたと言う。何だか出来過ぎた話だ。
 “Not~”という英語を見て、エリック・シーガルの小説を原作とする映画「ある愛の詩」(1970年)を、映画音楽(フランシス・レイ)とともに思い出してしまった。白血病で短い人生を終えるアリ・マッグロー演ずるジェニファーがライアン・オニール(テータム・オニールのパパ・・・と言っても分からないかなあ)演ずるオリバー青年に語る言葉だ。”Love means never having to say you're sorry.”(愛とは決して後悔しないこと)。Wikipediaで調べて見れば、「愛していれば後から謝ったりしなくていい。」という意味だとある。人によって、人生経験に応じて、いろいろ思いあたるところがあるだろう言葉だ。
 私の全く個人的な経験でも、人生を振り返ると、「不作為」の後悔だらけで、だったら「作為」の後悔にしておけば良かったじゃないかと、他人事のように思うのだが、それが人間らしいところでもあるのだろうか。そして、「後悔 先に立たず」と言うが、その昔、大学受験の頃に通った予備校の机に「後悔 後を絶たず」と並べて書いてあって、思わず感心したものだ。この歳になって、多少は図々しくなっても、やっぱり後悔はし続けるのだろうか・・・
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