風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

マエストロに捧げるG線上のアリア

2024-02-13 03:02:20 | スポーツ・芸能好き

 小澤征爾さんが6日、心不全で亡くなった。享年88。

 「世界のオザワ」について、クラシックが苦手な私に言うべきことはない。朝日新聞から引用する。「カラヤンに弟子入りし、1961年にはバーンスタインにも才能を認められ、ニューヨーク・フィルの副指揮者に。ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど世界の名門楽団と共演を重ねた。(中略)カナダのトロント交響楽団を経て70年、米タングルウッド音楽祭の芸術監督とサンフランシスコ交響楽団の音楽監督に。73年から29年間、ボストン交響楽団の音楽監督を務めた。2002~10年にはオペラの最高峰、ウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めた。02年には日本人指揮者で初めてウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに登壇した。」(2月9日付)。なんと華々しい経歴だろう。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、9日、SNSに、指揮をする小澤さんの写真と共に「ベルリン・フィルはかけがえのない友人であり、当楽団の名誉団員でもある小澤征爾に心からの哀悼の意を表します」と日本語で追悼のコメントを投稿したそうだ。フランスのフィガロ紙は「クラシック音楽の魔術師、小澤征爾が死去」との見出しを掲げ、ルモンド紙は「西洋で指揮者として初めて成功したアジア人だ」と伝えたらしい。西洋音楽へのコンプレックスがある日本人にとって、これほど誇らしいことはない。

 私はただ、人生で唯一の接点である1997年の夏の一日を思い出すだけである。

 場所はボストン郊外、森の中のタングルウッド。ボストン交響楽団の演奏の中央に小澤征爾さんがいて、芝生が広がる広場では、人々が思い思いに音楽を楽しむ。芝生で寛ぐ若者たち。テーブルと椅子を持ち込んで、ワインを片手に耳を傾ける老夫婦。そして、アメリカ駐在中の私は、同僚家族とともに、レジャーマットを敷いて子供たちを遊ばせながら、ピクニック気分。なんと贅沢な時間だろう。

 1973年から2002年まで29年間にわたって音楽監督を務めたボストン交響楽団では、9日午後の公演で、小澤さんが生前、友人が亡くなったときに別れの曲として贈っていたというバッハの「G線上のアリア」が楽団員によって演奏され、そのまま静かに演奏の手をとめて黙祷を捧げたそうだ。そして、ボストン交響楽団が拠点とする音楽ホールでは、建物についた楽団の頭文字の「BSO」という看板の「B」の字の電気を消して「SO」とすることで小澤さんへの哀悼の気持ちを示したという。

 あの夏の日は永遠に。ご冥福をお祈りして、合掌。

 

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