風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北斎展ふたたび

2014-10-27 22:46:40 | たまに文学・歴史・芸術も
 「驚異の色彩 -抜群に美しい北斎、ボストンから来日!」と題する北斎展が、上野の森美術館で開催されています。私にとってはホノルル美術館の北斎展以来、2年振り、久しぶりに保存状態の良い北斎版画を堪能しました。
 もっとも、堪能したと言っても、訪れた先週火曜日の午後、わざわざ半日休暇を取ったのに、いきなり入場まで1時間待ちの長蛇の列におののき、入場後も、ご年配の方々が、折角、待たされたのだからと言わんばかりにそぞろ歩きされて、若造の、そしてセッカチの私は、遠巻きにして、ものの30分で美術館を後にしたのでした。
 それにしても、ボストン美術館所蔵の北斎は素晴らしい。かれこれ20年近く前にアメリカ出張の徒然にボストン美術館を訪れたことがあって、作品を大事にする同館は、長く展示せずにすぐにしまいこんでしまうと聞いていました。実際、浮世絵版画に使われた植物顔料は退色が速いのが難点で、日本に残る浮世絵の色の退潮が著しいのはそのせいですが、日本人よりも先に浮世絵の価値を認めた欧米が持ち出した作品は、さすがに保存状態が良いことに驚かされます。
 今回展示されている初期作品も、実に色鮮やかで、目を見張りましたが、やはり北斎の魅力は、富嶽三十六景をはじめとする「青」の鮮やかさにあります。今年5月、原宿・太田美術館で開催された「広重ブルー」鑑賞記(http://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20140513)で紹介した通り、オランダ舶載のベロ藍(ベルリンブルー、プルシアンブルーとも)が中国で安価に生産されるようになり、浮世絵にも使用されて、人気が高まり、溪斎英泉や葛飾北斎など多くの絵師が次々とこの新しい青色を用いた作品を世に送り出したものです。今回の展覧会の謳い文句は大袈裟とは思えないほど、「今まさに摺り上げたかと思わせるほど色目の鮮やかな多くの作品が、浮世絵ファンを魅了」すること請け合いです。こうした誰もが知る有名な作品ばかりでなく、遺存の少ない団扇絵や切り抜いて組み立てる組上絵が切り抜かれずに揃いで残っているなど、貴重な作品も少なくありません。
 名古屋、神戸、北九州と巡回し、トリとなる東京での北斎展は11月9日まで。平日昼間でも1時間待ちは覚悟しなければなりませんが、一見の価値があります。
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