風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

リアル・エール

2012-07-29 11:22:45 | グルメとして
 欧州紀行の落穂拾いとして、余りエピソードがなかった中で、一つだけ言っておきたいのが、イギリスのビール、リアル・エールのことです。最近は、デフレの世の中で節約のために晩酌を第三のビールに切り変えたり、健康のためにビールをワインに切り変えたりする人が多いと思いますが、外で飲む、きりりと冷えたビールの喉ごしの爽やかさは、夏の風物詩であるだけでなく、一年を通して、飲み始めの一杯の定番であり、大いなる楽しみ(贅沢!)の一つでもあります。ところがイギリスのパブで昔から親しまれてきたビールは、このラガー・ビールとは一味違う、リアル・エールなのだそうです。
 ロンドンに到着した夕方、レストランに行くのに地下鉄に乗らなければならないほど街はずれのホテルにチェックインして、目と鼻の先にパブだけは一軒あるので、どうせ時差ボケで身体は多くを受け付けないだろうと、パブに入りました。機内で、現地駐在・日本人向けにお土産として買い込んだ雑誌の一つに、ニューズウィークがあって、裏ロンドンという特集でリアル・エールに注目とあったので、秘かに期待していたのでした。
 リアル・エールとは、サイトをいろいろ見ていると、「伝統的な原料から造られ、最終的に供される容器(Cask(樽)と言います)の中で二次発酵によりコンディショニングされ、ビールに炭酸ガスが殆ど含まれず、外部からの炭酸ガスによらずに注がれるビールのこと」を言うそうです。ラガー同様、麦芽を原料としますが、酵母を常温で短時間に発酵(一次発酵)させるので、複雑な香りと深いコク、フルーティーな味を生み出すと言われます。その際、タンクを密封しないため、余計な炭酸ガスは開放されるようです。そのため、日本人には気が抜けたと思われるかも知れませんが、その分、ビール本来の味わいがあります。その後、Caskに移される際、ろ過や加熱処理を行わないため、新鮮な香りや味が保たれます。そしてパブに引き渡された後も、Caskの中で発酵(二次発酵)が僅かながらも進むため、温度管理や適度なカーボネーションになるように調整しながら、ビールが熟成しクリアに澄むのを待つことになります。こうして良好な状態を保つには、作り手(醸造所)側とパブ側がともに手間をかけて、ビール本来の味わいを完成させていく必要があるものなのだそうです。実際に、Caskの中の温度そのままに運ばれるので、きりりと冷えた・・・といった刺激はなくて、生ぬるくてまったりとした、しかしそれだけにビール本来の旨さが味わえるのだろうと思います。私はすっかりはまってしまって、ロンドンにいる二泊と、帰りのトランジットのヒースロー空港でも、名残り惜しむようにリアル・エールを口にしました。
 最近は、イギリスのパブでも禁煙が施行されたニュースが衝撃を与えましたし、家庭回帰でパブから人の足が遠のきつつあるとも伝えられます。さらにドイツなど大陸から輸入される安価なラガー・ビールに押されて、伝統的なリアル・エールはやや元気がないとも言われます。しかし、グローバル化や景気の波にさらされようとも、伝統の味は、しぶとく生き続けて欲しいと思います(味が負けてしまうとか味覚が変わってしまうのであれば仕方ありませんが)。
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