保健福祉の現場から

感じるままに

がん検診事業は抜本的な見直しが必要ではないか

2011年02月24日 | Weblog
「平成21年度地域保健・健康増進事業報告の概況」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/09/index.html)によると、平成21年度に市区町村が実施したがん検診の受診率は、「胃がん」10.1%、「肺がん」17.8%、「大腸がん」16.5%、「子宮がん」21.0%、「乳がん」16.3%である。また、平成19年国民生活基礎調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-19-1.html)では、「過去1年間にがん検診を受診した者」は、「胃がん検診」男性32.5%・女性25.2%、「肺がん検診」男性25.7%・女性21.1%、「大腸がん検診」男性27.5%・女性22.7%、「子宮がん検診」21.2%、「乳がん検診」20.3%(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/3-8.html)である。国民生活基礎調査は、職域等で受診するものも含んでおり、平成22年の調査結果が注目される。しかし、国のがん対策推進基本計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html)や都道府県がん対策推進計画(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/news/2008/plan.html)に掲げる「平成23年度末までに受診率50%」には程遠い。がん対策推進基本計画中間報告(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_keikaku04.pdf)で「がん検診受診率50%の目標達成は「予断を許さない状況」とされているが、もはやそんな段階ではない。厚労省資料(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/1888057a89d5776e4925782d00255041/$FILE/20110204_2tenpu2.pdf)p19に出ているように、国際的にみて、我が国の2割台の受診率がいかに低いか、もっと社会的に認識される必要がある。しかし、現在の制度のままでは、がん検診受診率が国際水準になるのは至難の業であろう。厚労省の報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0301-4c.pdf)p8では、市区町村におけるがん検診の受診率の算出にあたって、受診率の分母となる「対象者数」は、「市区町村人口-就業者数+農林水産業従事者数」とされ、就業者は市町村ではなく、職場でがん検診を受けることが前提となっているが、これは実態を全く反映していない。がん検診は、労働安全衛生法による事業所定期健診には含まれておらず、義務付けられてもいないからである。例えば、東京都の「職域のがん検診実施状況実態調査」(http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/05/60j5r400.htm)では、がん検診が実施されていない事業所が少なくないが、就業者に対して、がん検診の個別案内をしている市町村は極めて少ないであろう。一方、医療保険者に義務付けられているのは、40歳以上の特定健診(いわゆるメタボ健診)である。この際、がん検診を保険で受診できるようにするか、実施主体を保険者にすべきなのかもしれない。諸外国では保険でがん検診が受けられるところが少なくないらしい。厚労省資料「韓国が、がん検診受診率53%を達成した理由―訪間視察報告―」(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/380f54d550b68aa1492577060002f879/$FILE/20100415_1jirei1.pdf)も出ている。我が国では、がん検診の代わりに保険診療が行われているケースが少なくない、という話も聞く。そういえば、先月の行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」(http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/0126/agenda.html)による中間取りまとめ(http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/0126/item10_06_01_02.pdf)p92では、「国民皆保険制度はこれを堅持しつつ、医療においては技術の進歩が国民医療費の増加要因になるとの特性を踏まえ、超高齢社会を迎えるにあたり、予防医療も含めて真に国民に必要な医療を整理し、公的保険の適用範囲を再定義することが必要。」と記されている。がん検診を保険で受診できるようにする、又は実施主体を保険者にする等も検討されないのであろうか。仮にそうなれば、高齢者医療確保法(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/hoken83b.pdf)第百二十条2項による、特定健診・保健指導の実施状況等に基づく、各保険者の後期高齢者支援金に対する加算減算(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000utuj-att/2r9852000000uu0a.pdf)のような仕組みや、一定期間がん検診未受診の場合は高額療養費の還付で調整されるような仕組み等も考えられる。がん検診の受診率は急増するであろう。但し、費用負担・精度管理・情報管理が課題となるのは間違いない。そして、その場合、がん検診の方法も抜本的に変える必要があると感じる。例えば、子宮頸がん検診については、細胞診とHPV検査の併用検診(http://www.cczeropro.jp/news_list/97.html)で、両方陰性の場合は検査間隔を拡げる方法である。細胞診の検体採取は、婦人科医師に代わって専門の助産師が行えるようにすれば、検診を行いやすく、費用を抑えることもできるであろう。乳がん検診についても、マンモグラフィを必須として、医師による視触診の代わりに専門看護職による自己触診指導を導入してもよいのではないか。果たして、諸外国の乳がん検診では、医師による乳房触診が必須とされているであろうか。子宮頸がん検診と乳がん検診は、女性スタッフのみになれば、受診者にとって抵抗感が小さいのは確かなようである、また、胃がん検診は、ピロリ菌抗体検査とペプシノゲン検査を併せた「胃がんリスク検査」(http://www.gastro-health-now.org/)(http://www.kensin-kensa.com/archives/cat48/abc/)を導入し、リスクの低い人は間隔を広げる方法が採用されてもよいのではないか、などである。仮に、我が国で各がん検診受診率が8割以上となり、「小さく見つけて小さな手術」が当たり前のようになれば、がん医療の現場は大きく変わるように感じる。ちょうど、小児の虫歯減少と短期治療で歯科医師過剰に拍車がかかったようにである。拠点病院を増やし、専門医師を増やすばかりではないであろう。
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