保健福祉の現場から

感じるままに

精神病床の機能分化と必要病床数の議論が必要

2016年09月23日 | Weblog
岩手日報「精神病棟、入院患者減で58床休止 県立一戸病院」(https://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20160922_11)。<以下引用>
<一戸町一戸の県立一戸病院(小井田潤一院長)は来年1月から、現在4病棟225床ある精神病棟のうち、1病棟58床を休止する。入院患者の減少に伴う機能再編で、3病棟167床となる。小井田院長を含む常勤医4人体制は変えず、看護師は他の精神病棟や退院後の訪問看護、在宅医療の強化などに振り向ける。同病院によると、精神科の1日平均入院患者数は2008年度の200人(病床利用率88・9%)から年々減少し、15年度は163人(同72・3%)、16年度は8月末現在で154人(同68・4%)となっている。精神医療については国が「入院医療から地域生活中心へ」という基本的方策を示していることもあり、同病院でも訪問看護などを推進している。今後も入院患者の増加が見込めないことから、病床数や病棟機能の見直しを行った。再編後は ▽休止病棟の機能を追加する病棟の職員体制強化 ▽専任の看護職員を配置する在宅医療班を新たに編成 ▽外来看護職員の増員―に取り組む。同病院の宮好和事務局長は「県北の精神医療の拠点として機能を維持し、限られた医療資源を効果的に活用したい」としている。>

「平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/15/dl/gaikyo.pdf)p41をみれば、精神病床の病床利用率と平均在院日数が一貫して減少していることがわかる。医療機能情報提供制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/teikyouseido/dl/youryou.pdf)では、医療機関の病床種別の「許可病床数」「前年度1日平均患者数」「前年度平均在院日数」が出ており、全国各地の精神科病院の状況がわかる。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000108755_12.pdf)p9~10「精神病床における入院患者数の推移」、p11「精神病床における入院患者数の推移(在院期間別内訳)」、p13「精神病床における退院患者の平均在院日数の推移」や、平成26年度衛生行政報告例の概況(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/14/index.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/14/dl/kekka1.pdf)で、平成26 年度の「医療保護入院届出数」が170,079 件で前年度に比べ41,901 件(19.8%)減少していること、内閣府「障害者政策委員会」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/)の資料「欧州諸国との比較からみる我が国の精神科強制入院制度の課題」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/k_25/pdf/s1.pdf)などをみれば、精神病床の現状がこのまま続くようには全く感じられない。しかし、医療法に基づく病床機能報告制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)は一般病床と療養病床を有する医療機関だけであって精神病床は対象外である。また、医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)では、精神疾患は柱の一つであるが、地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)での必要病床は精神病床が除外されている。これではいけない。「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について(施行通知)」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20160610_01.pdf)の「病院、診療所又は助産所の管理者が、患者、妊婦、産婦又は袴婦を入院させ、又は入所させるに当って遵守すべき事項のうち、精神疾患を有する者の入院に関する規定を改正し、精神疾患を有する者が、身体疾患の治療を行うために精神病室以外の病室に入院できることを明確化すること。」は周知徹底したい。実際に、一般病床、療養病床では、認知症高齢者をはじめ、精神疾患を有する方々の治療に対応してきている。一般病床と療養病床だけではなく、精神病床も含めて、地域医療のあり方を考える時代であろう。まずは精神病床の情報公開を徹底すべきと感じる。精神科病院の実態については、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)で把握されているが、あまり活用されていないように感じる。医療法に基づく病床機能報告制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)は一般病床と療養病床を有する医療機関にNDBとリンクした詳細な医療実績が公表されており、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)でもNDBとリンクさせ、「精神病床機能報告」として活用すべきかもしれない。「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000118658.html)の論点(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000118649.pdf)には、「精神病床のさらなる機能分化(病床機能の検討、精神病床の必要数)」が提示されており、行方が注目である。平成27年度からの第4期障害福祉計画では、①平成29年度における入院後3ヶ月時点の退院率64%以上、②平成29年度における入院後1年時点の退院率91%以上、③平成29年6月末時点の長期在院者数を平成24年6月末時点の長期在院者数から18%以上減少、の目標値が掲げられているが、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた支援方策に関する研究報告書」(http://www.nisseikyo.or.jp/images/about/katsudou/hojokin/h27_houkoku_6.pdf)の資料p4(p36)に都道府県別の「入院後3ヵ月時点の退院率」「入院後1年時点の退院率」「長期在院者数」の一覧をみれば、都道府県格差は小さくないようである。そういえば、内閣府「障害者政策委員会」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/)の資料「欧州諸国との比較からみる我が国の精神科強制入院制度の課題」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/k_25/pdf/s1.pdf)p2「認知症の人の精神科入院(医療保護)の急増」、論点(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/k_26/pdf/s1-4.pdf);p4「認知症に関しては、精神科医療での社会的入院の実態が容認されているが、その状況を改める必要がある。」とあり、以前の厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000046397.pdf)p5「1年以上精神病床に入院している75歳以上の精神疾患患者の47.3%が認知症」とあった。認知症患者の精神科病院への非自発的入院(医療保護入院)が普遍化しており、精神科病院の一部には療養病床のようなところもみられる。精神病床だけ特別扱いしていては、精神障害者地域包括ケアは非常に厳しい感じがする。現在進行中の「医療計画の見直し等に関する検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=127276)、「地域医療構想に関するワーキンググループ」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=368422)、「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=370580)では精神医療(認知症含む)について、どれほど議論されているであろうか。「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針(医療介護総合確保方針)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000102556.pdf)p14「他の計画との関係」では、地域福祉計画、医療費適正化計画、健康増進計画との調和が要請されているが、なぜ、「障害福祉計画」が入らないのであろうか。そもそも地域包括ケアシステムの法律上の定義;「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(医療介護総合確保促進法)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000052238.pdf)第二条「この法律において「地域包括ケアシステム」とは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう。」と「高齢者」に限定されているが、なぜ、「障害者」を含めないのであろうか。果たして、「医療介護総合確保促進会議」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-hoken.html?tid=206852)ではどのような認識であろうか。平成30年度から第5期障害福祉計画、第7期介護保険事業(支援)計画、第7次医療計画が同時スタートする。また、社会保障審議会障害者部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126730)の「「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」について(経過)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128863.pdf)に出ているように、改正障害者総合支援法の全面施行は平成30年4月1日である。精神病床の機能分化と必要病床数を論じる絶好の機会を逸してはいけないように感じる。「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html?tid=321418)の次回9月30日会合(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000137209.html)にも注目である。
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