中部大学の吉福康郎教授は私と同じ1944年の生まれ。東京大学理学部卒業を卒業した秀才だが、とてもユニークな研究者である。「カンフー映画の大スター、ブルース・リーの動きに魅せられ、格闘技をバイオメカニクスで解明する専門家になってしまった」と、中部大学ブックシリーズ『「なぜだろう?」がとまらない』の前書きに記している。ちなみにこの本のカバーオブジェは大和塾の1周年と5周年のポスターを制作してくれたイラストレーターの三浦均さんだ。
書かれているのは物理学の数式とそれを表にしたものばかりで、実のところ私にはさっぱり分からない。高校の時の物理の先生は藤井先生というとても優しい先生だった。「こんな数式のどこが面白いのかさっぱり分かりません」と言うと、「理系に進まない人は勉強しなくてもいいが、単位は取らなくてはならないから、1つだけ解けるようにしておきなさい」と言われた。確かにテストで1問は回答でき、それで赤点にはならなかった。
数式はさっぱり分からないが、テーマの付け方はどれも興味深い。中でも“定員まであと何名?宇宙船「地球号」“は、人類が地球に何年生き続けられるかを数式で導き出したものだ。人類は土着民が少なかった南北アメリカやオーストリアなど新大陸を開発し、勢力範囲を拡大してきたが、地球が無限でないことに気付いた科学者の問題提起を受けることになった。
そこで吉福教授は1)量的に扱う変数は世界全体の人口と環境の2つである。2)人間は生存のために環境を破壊する。破壊の程度が大きいほど経済は発展し、人口が増える。3)環境には自然の回復力がある。4)環境はある限度以下に悪化すると死亡率が高まる。として、地球上にぎりぎり150億人が住むことが出来ると仮定する。数式のことは分からないが、その結論は「人口増加と環境破壊を続ける限り人類は環境とともにそう遠くない将来に破局を迎える」という。