「先生、いる?近くに来たから」と卒業生から電話が入った。彼女のクラスの子が一番よく我が家に遊びに来ていたが、「初めて来た」と言う。話をしていると当時のことが思い出される。可愛くてきれいな子だったのに結婚は遅かったと記憶している。その話をすると、結婚に至った過程を話してくれた。ひとり娘が歌手デビューすることも半分心配しながら話す。本当に人生はいろいろだ。
このクラスの子たちも還暦を迎えた。行方知らずの子もいると言う。クラス会の他に女子だけで集まっているようで、「先生も来る?」と言ってくれる。女子会か、ちょっと緊張するなあー。今もデザインの仕事を続けている子もいるし、全く違う分野で活躍している子もいる。教師としては、教え子が例え分野が違っても元気に活躍していると聞くと嬉しくなる。
今日、私の高校の新聞部の仲間から集まりのメールが届いた。案内ハガキではなくメールというのも今を象徴している。もう、何年も前から集まろうと言っていた。「それなら桑名でやろう」と提案した本人から全く音沙汰なかったので、やっぱり今年もダメかと思っていた。高校生の時から意外に約束をすっぽかすことがあったから、ちょっとネジを巻かないとダメかと思っていた矢先だった。
高校の同窓会は毎年盛大に行われているようだが、私は一度も行ったことがない。新聞部に在籍し、文芸部の機関紙にも寄稿し、生徒会長も務めたが、人生を語り合えたのは新聞部の仲間だったから、新聞部の集まりがあればそれで満足なのだ。私にとって高校は人生を考える場であり、青春そのものだったのに、同窓会に出たいという気になれなかった。「誰だったけ?」と言われることが嫌な見栄っ張りなのだ。
人生もそろそろ終末なのだから、どこでどんな恥をかこうとかまわないのに、意外にヘンなプライドが残っている。まあ、それも含めて仕方がないと思う。