カミさんの実家へ行き、仏壇にお参りする。義父も義母も亡くなった。義父は警察官だったが、自分の家に竈を作り、陶芸に打ち込んでいた。大正3年生まれで、軍隊に召集されたのは、30歳近くになってからだと聞いた。戦地に派遣される前に終戦を迎え、警察に戻った。戦後の警察組織は大きく変わり、義父は地方回りを選んだ。
義父は、始めから警察官になりたかったわけではなく、先生になりたかったと言っていた。家が貧しく上の学校へ進むことは困難だったそうで、小学校を出るとすぐに呉服屋の丁稚となった。義父はとにかく「上」に登りたかったようだ。しかし、身体を壊し、警察官になった。そんな話を聞いたことがあるが、私の方から質問したわけではないし、何度かの話を総合すると、そうだったのではないだろうかというに過ぎない。
戦後の警察官の仕事では、ヤミ屋の取締りでよくお酒を飲まされたと言っていた。取り締まりに手心を加えて欲しいというものだ。そのうちに警察組織もだんだん整ってきて、泥棒を捕まえた実績よりも、何もしなくても学歴の高い者の方が出世していく。中央にいても結局冷や飯を食べることになると読んだから、義父は地方回りの道を選んだのだと思う。そこで、たまたま陶芸に出会い、その魅力に惹かれていったのではないかと、私は推測している。
たまたま出会った陶芸が再び義父に「上」を目指す力を与えたのではないだろうか。私が知る限りでは、随分といい作品を作り、師匠の上をいく勢いだった。一度、作品展を開いたけれど、素人の私が見ても凝った作品だなと思うものが結構あった。もう少し私が真剣に、作品展を次々と開催するように考えてあげればよかったのに、その時はまだどうしてよいのかわからなかった。たぶん、もっと長生きしてくれるだろうと勝手に思い込んでいた。今になって誠に申し訳ないことをしてしまったと思っている。
義父が願っていた「上」へ、そういう意味で近づいていると感じられる位置にいながら、そうさせてあげられなかったことを悔やんでいる。家族のためとか、もちろんそういうこともあるのだろうが、自分はこんなものではない、もっと「上」の世界に行かなくてはならない、いや、自分が生きてきた価値はこうなのだと義父が胸を張って言えるようにしてあげたかった。
私の父も、カミさんの父も、昔の人は努力して自分の世界を切り開こうとしていた。オリンピックでもそうだけれど、「上」に行くためにはもちろんその人の才能が一番求められる。けれども、いくら才能があってもタイミングがある。巡り合わせがあるのだ。逆に、巡り合わせがよくても、才能がなければ花は開かない。それでも、育てている花たちを見ていると、巡り合わせが一番の条件のように思う。
義父は、始めから警察官になりたかったわけではなく、先生になりたかったと言っていた。家が貧しく上の学校へ進むことは困難だったそうで、小学校を出るとすぐに呉服屋の丁稚となった。義父はとにかく「上」に登りたかったようだ。しかし、身体を壊し、警察官になった。そんな話を聞いたことがあるが、私の方から質問したわけではないし、何度かの話を総合すると、そうだったのではないだろうかというに過ぎない。
戦後の警察官の仕事では、ヤミ屋の取締りでよくお酒を飲まされたと言っていた。取り締まりに手心を加えて欲しいというものだ。そのうちに警察組織もだんだん整ってきて、泥棒を捕まえた実績よりも、何もしなくても学歴の高い者の方が出世していく。中央にいても結局冷や飯を食べることになると読んだから、義父は地方回りの道を選んだのだと思う。そこで、たまたま陶芸に出会い、その魅力に惹かれていったのではないかと、私は推測している。
たまたま出会った陶芸が再び義父に「上」を目指す力を与えたのではないだろうか。私が知る限りでは、随分といい作品を作り、師匠の上をいく勢いだった。一度、作品展を開いたけれど、素人の私が見ても凝った作品だなと思うものが結構あった。もう少し私が真剣に、作品展を次々と開催するように考えてあげればよかったのに、その時はまだどうしてよいのかわからなかった。たぶん、もっと長生きしてくれるだろうと勝手に思い込んでいた。今になって誠に申し訳ないことをしてしまったと思っている。
義父が願っていた「上」へ、そういう意味で近づいていると感じられる位置にいながら、そうさせてあげられなかったことを悔やんでいる。家族のためとか、もちろんそういうこともあるのだろうが、自分はこんなものではない、もっと「上」の世界に行かなくてはならない、いや、自分が生きてきた価値はこうなのだと義父が胸を張って言えるようにしてあげたかった。
私の父も、カミさんの父も、昔の人は努力して自分の世界を切り開こうとしていた。オリンピックでもそうだけれど、「上」に行くためにはもちろんその人の才能が一番求められる。けれども、いくら才能があってもタイミングがある。巡り合わせがあるのだ。逆に、巡り合わせがよくても、才能がなければ花は開かない。それでも、育てている花たちを見ていると、巡り合わせが一番の条件のように思う。