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友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

ヒラリーさんの敗北

2008年06月06日 22時24分35秒 | Weblog
 アメリカの民主党の大統領予備選挙は、やはりオバマ候補がヒラリー候補に勝った。ヒラリーさんがアメリカ初の女性大統領になる夢は終わってしまった。彼女を支えた熱狂的なヒラリーファンはさぞガッカリしていることだろう。そういう人たちが、本選挙ではオバマ氏を支持しないとあからさまに言うのはなんとも情けない気がする。

 前にも書いたが、ヒラリーさんが負けたのは幅広い支持を当てにした政策にあると私は思っている。それを戦術がまずかったとアメリカ人なら言いそうだけれど、政治に対する基本的な姿勢で結局は保守的になっていたことが支持を失った原因だと思う。オバマ氏は終始、「私」ではなく「私たち」を強調した。やはり、ブッシュ政権に対する嫌悪感がオバマ氏への共感となったのだろう。

 それにしてもヒラリーさんは22億円の借金を抱えてしまったと報じられていたが、規模が違うとはいえ、アメリカの選挙はお金がかかるようだ。ヒラリーさんの伝記を読んでも、活動家というか支持者が今回なら11ヶ月もの間、有権者のところへ1家ずつ回っていくのだから、やはり大変なお金が必要になるのだろう。それもほぼ毎日となれば、とても手弁当ではやって行けない。

 ヒラリーさんとオバマ氏のコンビでは、果たして共和党コンビに勝てるだろうかと思う。アメリカ人の多くが新しいアメリカを望んでいることは理解できるけれども、地球全体の経済活動の低迷や地球環境の温暖化現象、宗教対立や部族間対立が未だに解決できない現状を果たして変えていくだけのリーダーシップを発揮できるのだろうか。

 6月4日の「朝日新聞」に興味深い記事を見つけた。田中慎弥さんという作家の文章だ。昨年度は芥川賞候補に、また今年4月には川端賞を最年少で受賞している。その田中さんは「高校を卒業して以降、就職どころかアルバイトさえしたことがなく、大学、専門学校、予備校などへ通いもせず、つまり何もしていないと呼ぶ以外にない状態が長く続いた」人なのである。「働きたくなかった、働かなかった、それだけだ」。「そういう生活に突入した場合に感じる筈の焦りや不安といったものは、いっさい覚えたことがない」。「危機感がないからそういう生活を送っていたとも言える」。

 こういう人が現れたのだと私は思った。それにしても、彼の両親もよく耐えたものだと思う。彼の文章には全く出てこないけれど、彼が「そうした生活」を送ることができたのは、食事と寝る場所を与えてくれた両親がいたからだ。「親から金をむしり取って映画を観にゆく」余裕すら持っていた。しかし、彼が人と違うのは、映画を観にゆく電車の中で、「この電車に乗っている人間の中で『源氏物語』の原文を2回通読したのはたぶん自分だけだろうな、と、不遜で、無恥で、無礼で、しかし、この世で自分にとってだけは多少の意味がないわけではないことを思い巡らせて、卑屈に安心していた」ことだ。

 時代は内面に向かおうとしている。
コメント (1)
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