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蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

彼にするなら、Yクン? 仕事するなら???

2010-07-28 | 仕事
以前、ほんの短期間働いていた、事務所のスタッフ、Yクン。

身長180センチぐらい、趣味は、ダンス(ストリート系)
色白で面長、きめ細やかな美しい肌、切れ長の目が涼しげな和風顔立ちのイケメン。

年は、20歳ぐらいだっただろうか?

最初、面接に現れた時は、どんな服装だったか、ちょっと記憶にはないのだけれど
とにかく、スラリとかっこいい、美しい男の子だった。
採用が決まって、初日は、スーツでビシリと決めてきた。

別にスーツでなくてもいいと言ったような気もするが(忘れた・・・)
本人は、無難な路線を選んだようで、スーツに。
おそらく、成人式に一度、着たぐらい? あとは、友達の結婚式とか。

まあ、どっちにしても、職場において、彼はスーツを着る必要性は全くなかったので
次の日からは、私服で現れた。

それにしても、スーツと私服の激差。
ストリート系ファッションだとかで、ついでに、シャツもパンツも、500円前後だとか言っていた。
帽子は、黒人演歌歌手のジェロみたいな、キャップを横にかぶる日もあれば、ニット帽の日も。
仕事の後は、ダンスに直行らしい。

さて、彼の仕事ぶりは・・・

「Yクン、これ、やってもらえる?」
「できません」
「??」
「僕、専門学校で、ちゃんと授業に出たのは最後の半年だけなんです。
だから、習ってないので、できないんです」
「・・・・」

「Yクン、これって、どうなってるの??? できてないけど」
「何回も言ってるでしょう?
ですから僕は、専門学校でさぼっていたから、デキナイって」
「??・・・・」

先輩にも急かされ、あれこれやっていた。
パソコンのモニター画面ギリギリに顔をくっつけて。
メガネかけたらいいのに。
自分はメガネは似合わない、オトコマエが台無しと思っている???
顔で仕事するのなら、ホストにでもなれば、およろしいのではないかと?

前は、企画営業を希望したらしいが、見習い期間(採用猶予)を経て、不採用になったという。
そのワケがよくわかる。
うちは、猫の手も借りたいぐらいだったので、とりあえず、現場に入ってもらった。


しかし、彼は、仕事以外は、朗らかで明るくて、社交的でムード・メーカー。
お年寄りにも、優しい口調。
絶対に、営業向きだ。
事務所内でカンヅメは、合ってない。

ファックスのやり方がわからないのに、人にも聞かず、
人のやり方を盗み見るのでもなく、自分流でファックスするYクン。
ファックス送信後に、送信先に確認もしなかったようで、
先方には届かなくて、締め切りの時間に大幅に食い込むことに。
周りが手取り足とり教えてあげるにも、バタバタ、皆、自分のことで精いっぱい。


先輩から怒られっぱなしで、どうにかこうにか、1か月働いた。
そして、給料日。
Yクン、給料袋の中身を見て、目が点になり、信じられない様子。
「あんなに頑張って、この給料?!」

「やってられません。飲食のバイトのほうが、ずっと高い。
やめます」


今、思えば、なんで、あんな子を雇ったんでしょうねえ。
私の職場は、そういう人ばかりだった。

職場にも一流と、そうでない所があり、その差は歴然。
一流の職場には、一流の人が集まり、そうでない所には、そうでない人が集まるようだ。




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ある日の社長

2010-07-23 | 仕事
ずっと以前、仕事で担当した、派手派手クライアントのオーナー社長、H氏。

「今日の打ち合わせは、Sホテル(神戸市内の一流都市ホテル)の最上階の会員制ラウンジでお願いします。」

そう秘書女史から連絡が入った。

ちなみに、この秘書女史には、えらく年齢詐称されていることに、
私は、永年気づかなかった。
27歳だということだったが、10歳ぐらいはサバを読んでいたようだ。
そんなことは、私にはなんの関係もないことなのだが、
この秘書女史にも、いろいろあって、書ききれない。

まあ、とにかく、会員しか入れないラウンジに入ると、
強面(こわおもて)のお若い男衆たちに、かしずかれるように、社長は座っていた。

まさしく
「近こう寄れ」
の状況。
私と営業K氏は、きょろきょろ、場違い感をひしひし感じながら、社長の至近距離に割り入った。


我々の話が進んでいると、社長の斜め延長上に、存在感のある女性が座っていた。
ちょうど私は、社長も見えるし、その女性も一直線上に見える位置。

女性はなにやら言いたげな、ボディ・ランゲージで、メッセージを発したい様子。

こちらばかりをじっと見つめる。
私を見つめるわけがないので、お目当ては、H社長。
(H社長は、体育会系で筋肉隆々、オシャレなイケメン。あ、ついでに、お若い)
その濃厚女性は、年のころなら40過ぎ?
身なりは、重厚で個性的、品質が高い、お金もかかってそうな服装。
そんな服、どこに売ってるん???みたいな。
あまり庶民が目にする、商店街の軒先で見かけるようなファッションではなかった。

ノースリーブには、真っ白な腕が、なまめかしく伸びていた。

いわくありげな目で、たっぷり情感を溜め、こちらにオーラを放ってくるので、
私は社長との話をするにも、その女性が気になって仕方がない・・・。

なんか、用?
用なら、手早くすませてよ。

私は、あくまで仕事で接していたので、そんな、ややこしい濃そうな女性は
一秒も早く、とっとと消えてほしかった。
私たちがいなくなってから、たっぷり、ご用件を詰めてください。

そうこうしているうちに、その女性が、ラウンジのスタッフを介して、
なにやらメッセージを寄こしてきた。

「作家 ○○○○ 電話番号 ○○○○ 」
という名刺のようなメッセージカードみたいなものに、直筆で
「私、○○と申します。お話したいことがありますので、お電話、お待ちしています」
と書いてあった。

社長は、興味ないような、うんざりしたような様子で、ぽいっとどこかに置いた。

へぇ~
なんだか、映画の1シーンみたい。

あとで秘書女史が言っていた。
「私、あの女性を知っています。昔、実家でお会いしたことがあるんです」
どうやら、実体のある方ではあるらしいようだが・・・。
秘書女史は、あまりいい顔をしなかった。

いわくありげで、色々、複雑な事情がからみついていそうな状況だったが、
私は、次の仕事の件もあるし、当日分の社長の話が済んだら、
なんでもいいから早く帰りたかった。

あの人たちの、独特の空間に居ると、疲れるというか、奇妙、というか、
異次元というか・・・
何が本当で、何が嘘で、誰もがそれをわかっていて、でも、表には出さず・・・
虚実取り混ぜた世界のように思えた。

砂の上に建っていたその会社は、それから何年かして、もろく崩れ落ちた。
だが、必ず、裏はありそうだった。
あのまま、消えてしまうということはないと私は感じた。


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ふと思い出す、あれこれ

2010-07-17 | 仕事
ずっと以前に仕事で担当していた、あるお方。
ある日、突然、テレビのニュースで、お見かけした。

あら?!
H社長!!

賞でもお取りになったとか、業界再編で頑張ったとか、
そういうのとは、全く違う、
逮捕の瞬間!?
警察沙汰の事件だった。

税務署からの捜査があった時、そう言えば、この方、豪語されていた。

オレは、なにも悪くない。
儲かったお金をちょっとだけ、横っちょに、どけといた※だけや。
(※どけておく→のけておく→別にして取っておく
 この言葉、わかりにくいかも知れないので、ちょっとだけ補足を)


この件で、新聞に載っていたのを見たことはあるが、
H社長の自宅前でカメラに撮られた映像が放映されるとは・・・。


Giorgio Armani (ジョルジオ・アルマーニ)を着て、ベントレーに乗り、
ついでにタイでボクシングもする、飛んだり跳ねたりの若きイケメン。
新社屋には、ジムや道場も備えてあった。
新入社員は、ここで、ボコボコにされるのかと思うと、なんだか胸が痛かった。
この社長のエピソードは、結構あって、一度には書ききれないのだが。

仕事をさせていただくと、いろんな方にお目にかかる。

でも、捕まってはいけません。
(かといって、逃げるとか、ごまかすとか、証拠隠滅とか、そういうのは、もっといけません)

我々は、前々からこの会社が、ちょっと胡散臭いので、手を引こうとしていたが
この件で完全に撤退した。

表舞台からは姿を消したH社長だが、まだまだお若いので、
おそらく、水面下でなにやら、おやりになっていることだろう。

私生活では絶対に出会うことのない、ユニークな経験をさせていただいた。
いろんな方が、世の中にはおられるものだ。


写真は、 Giorgio Armani (借り物画像)。
ファッション界の帝王、ジョルジオ・アルマーニが、
2007年11月、フラッグシップ店となる銀座タワーをオープンし、
そのオープニングセレモニーには、ケイト・ブランシェットも参加した。



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奥サマのカン違い

2010-06-17 | 仕事
過去のある日のこと。

仕事でのこと。
外部スタッフにサポートしてもらう時期もあった。
外部スタッフの一人、Nさんと、仕事をしてもらう日時を決めるにあたってのやりとり。

「○曜日は、幼稚園のお迎えがあるので、その時間は無理です」
「○曜日は、テニスの練習があるから、ダメです」
「○曜日は、お友だちと会う約束があるから、NGです」
「○日○曜日の○時~○時なら、大丈夫です」

どうやら、ご自分の子育てと趣味と、お楽しみの時間は確保した上で
余った時間を、仕事に使いたいという方針のようだ。

そこまでして、お手伝いをお願いするほど、こちらは深刻な人手不足でもないし、
仕事をしたい人は他にも大勢おられたし、
Nさんにしか出来ないことなど、なにもないので、
彼女に仕事をお願いすることは、なくなった。


それにしても、なんと明るい朗らかな、ご自分スケジュール。
仕事を何と心得ておられるのでしょう?
もともと仕事なんぞ、本気でする気がないようなので、選択を誤っただけと言えるが、
優雅な奥サマには、それに応じたライフスタイルをお送りになられるのがよろしいかと。
その、まったり生活には、間違っても、「仕事」が混在することは不可能だ。

奥サマの趣味が高じて、お料理や、フードコーディネーターなどの仕事も、
実際の仕事として行う場合は、かなり厳しい。
趣味で楽しむのと、仕事としてやるのとでは、雲泥の違い。

「少しだけ働く」というスタンスも、可能な職場と、不可能な職場がある。
「少しだけ」のさじ加減が、難しい。
自分の思いが反映できる働き方を見つけようと、皆さん頑張っておられるが
そんな都合のよい職場があるのなら、お教えいただきたい。

過酷な労働に耐えている、黙々と働いている人もおられるが、
私の知る範囲では、
自分の能力と努力、やる気、覚悟に応じた職場を探すべきだと感じる人も少なくない。
仕事に対するモチベーションと深く関係していると思う。


仕事も分野や、職種、形態が広範囲、マチマチなので、一般論を言うと、焦点がボケる。
自分の周りのことだけ見て、自分のことを棚に上げて、あれこれ、だらだらと・・・
切れ味悪く、〆ができないのが、心残りですが。


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陰湿ばあさん達の集団イジメ

2010-03-03 | 仕事
ある仕事仲間、外注ブレーンの一人であるY氏。
彼は会社勤務後に独立して、フリーで仕事を請け負って、30年近くになる。
最近はガタンと受注量が減り、アルバイトを始めた。
バイトは、頭を使わなくていい単純作業なので、最初の頃は、気分転換のようにやっていた。
本職は、頭も感性も不可欠な特殊技能を要するものなので、
大勢の女性たちが働くその職場での軽作業を楽しむかのようだった。
あれから4年。

昨日、本来の職の方での納品のために弊社を訪れてきた。
彼は、疲れきった顔。いつも笑顔が絶えない人なのに。
本職の方は、益々厳しく、業界も冷え込み、さらに受注量が減って、
今やアルバイトが本職となり、本職がアルバイトとなっているが、
その今の(逆転)本職の方で、イジメに遭っているらしい。

ばあさんたちが集団で彼をいじめるとか。
「一人につき、20才のお嬢さんが3人分。そりゃ、すごいで。30人いるから90人分や。」
つまり、ほとんどの女性たちは60才ぐらいらしいが(世間的には、オバサン)、
その中でも、彼は男性ということで異分子。
最初は、頭を低くして、彼女たちに可愛がられるよう、努力していた。
彼女たちも、そこそこ受け入れてくれたようだった。
Y氏は、作業内容を説明してくれたり、うまくいっているようで、当時は楽しそうに話していた。
が、徐々に、不調和音が生じ始めていたようだ。
ばあさんたちは、毛色の違う異分子は排除したいのだろう。
陰湿に、ねちねち集団でイジメてくるらしい。
神経が持たない、と彼は嘆いている。

同じ職場で、彼の娘さんも一時、バイトをしていたが、1週間で辞めたとか。
やはり同じようなイジメに遭い、とても保たなかったそうだ。
20代前半の娘さんを、集団で60代のオババ達がイジメる。
そりゃあ、娘さんも音を上げるだろう。むしろ1週間もよく保ち堪えたほうだ。
奥さんも、その職場に関連するスーパーで働いたが、半年で辞めたそうだ。
彼は、辞める気持ちがよくわかると言う。

Y氏はもう年だし、どこも雇ってくれるところはないと言う。
なので、じっと耐えるしかないそうだ。
カントリー・ウエスタンっぽいファッションに身を包む、180センチ、恰幅のいい彼が、
大勢のばあさんたちにイジメられていると思うと可哀想だ。
辞めたくても辞められない、彼の事情も気の毒だ。

彼は、若い時は給料が安かったし、企業に勤めた期間が短かったので、年金も、涙ほど。
大酒飲みで、時々ギャンブル、お金には執着もしないし、ほとんど使ってしまっているように見えた。
憎めない楽天家なのだが、人生の後半に、「アリとキリギリス」のキリギリスになってしまったかも?
そんなキリギリスを、集団でイジメるなんて、そんなこと、しないでくださいよ。おばあさんたち。

ただし、これはY氏から一方的に聴いた話なので、実情は、微妙に違うのかも知れない。
かつて、私も彼と仕事のやりとりで、結構困ったりもした。
なので、おばあたちの言い分もあるかも。
娘さんが辞めたのも、「イジメられた」と取るか、「根性が足りなかった」と取るか。
おばあたちも、厳しい背景を抱えて働いているのだろう。

「頭なんか全くいらない、誰にでもできる、あんな仕事。
代わりの人間なんか、掃いて捨てるほどいる。歯車の一つに過ぎないんや。」
とY氏は、吐き捨てるように言うが・・・。
元々、独自の個性や能力を活かした仕事をこなしてきたY氏には、屈辱的な仕事だろう。
おばあたちの中にも、そういった特殊能力を持ちながら、軽作業に従事している人もいるかも知れない。
ただ、そんなことは表に出さず、仕事と割り切っているのかも。

実情、現状は、想像するしかないが、いずれにしても、厳しい世の中だ。



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仕事って・・・

2010-01-27 | 仕事
今日、事務所に、元の仕事仲間のT君が来た。
彼は、うちの事務所を去ってから、しばらくは友人の勤める会社に席を置かせてもらい、
その会社から仕事を請け負っていた。
次の安定した職場がなかなか決まらない彼に、
我々は、ある会社を紹介したが、彼にしてみれば敷居が高いのか、ノリが悪かった。
先方が雇うと言っているのに、乗る気がなかった。
大手だったのに。
彼には、荷が重かったのだろうか。

あれから、2年。
彼は、ハローワークからの紹介で50社を受けたという。
結局、どこにも採用されず、今は単純軽作業のバイトをしながら生きつないでいるらしい。
彼は独身で、実家住まいだから、やっていけるのだろう。

彼のお父さんは、病気で療養されていたが、医療費は、嫁に行った妹さんには当てにできず、
その時、初めて自分が長男だと身にしみて感じたという。
そのお父さんも、3年ほど前に亡くなった。
お父さんの医療費は、彼が出していたので、今は医療費を捻出する負担もなくなったものの、
厳しい状況は続いている。

彼は、ルックスのいい青年だった。歌もうまかった。
染めていないのに、ナチュラルな茶色がかったサラサラ、ストレートの髪。
鼻筋が通った高い鼻、切れ長の、でも細くはない目。
色白で、きめ細やかな肌、純日本風の美青年だ。
イケメンという表現は軽すぎる。

しかし、美しい外見は、あくまでも外見。
仕事のやり方は、決して美しくなかった。
仕事以外で出会いたかった人物のうちの一人だ。
彼の仕事に関することを言い始めると、何時間ブログに取り組んでも、終わらない。

仕事は、厳しい。
見かけではないということ、そういう現実を、嫌というほど思い知った。


忘年会シーズン、真っただ中

2009-12-12 | 仕事
昨夜は、仕事がらみの忘年会「Part2」。
我々は接待する側なのだが、お客様は、仕事を発注してくれる会社の担当者、O氏。
「30分遅れる」というO氏からの連絡を受けたまま、
待っても待っても彼は現れない。
ようやく1時間10分後に、O氏は姿を見せた。

店は、予約を取らない主義の寿司屋。
なので、開店直後から、カウンター席の陣取り合戦。
1時間近くも待っていると、そこそこ酔いも回るし、お腹も膨らんでくる。
そのO氏の遅い出現から、なんと5時間もその店に居た。
待ち時間を入れると、6時間を超えた。
その間、ビール、焼酎、日本酒、一品料理のあれこれ。
お寿司屋さんなのに、御飯がなくなって、お寿司はオシマイ。
ネタ切れならぬ、シャリ切れ。

O氏は、お客さんであり、あくまでも接待の一貫なので、
最初はあまり気分が乗っていないO氏を盛り上げるまでは、
あれこれ話題を振ってウォーミング・アップ。
次第にお酒も回りはじめ、O氏の趣味のF-1レースや電車の話などで、盛り上がり
だんだん、お酒の潤滑油効果が表れ始めた。

O氏の亡くなったお父さんの話に、もらい泣きしたり、
今度の仕事の構想やプロジェクトの話を聞いたり、
マーケティングや開発、会社の実情、
次の受注につながる仕事の前約束をしたり。
時間が経つのは、実に速い。

彼のお酒は、悪いお酒ではない、陽気な飲み方だ。
ただ、やたら強くて、太刀打ちできない。
そこからは、接待のプロ中のプロ、新地のママに、バトンタッチ。
私以外の人たちは、タクシーで新地のスナックに向かったが、
私は、日付変更線が変わる前のシンデレラのごとく、後は、徹夜組にお任せして失礼した。
彼らは、翌朝の電車の始発時間まで、飲みに飲む。
飲んで、歌って、食べて、しゃべって、・・・
それにしても、よくまあ、飲むものだ。

電車には、忘年会の帰りと思われる人たちが、わんさか。
大声で酔っ払い口調で、延々と一方的にしゃべっている女性がいた。
ホームでべらべら、女性の、ろれつの回らない声が続く。
みっともない、うるさい、耳障り・・・いつまで続くのか。
ああいうのには、なりたくない。
駅から自宅に向かうタクシーは、長蛇の列。
タクシー乗り場から見える、屋台のラーメン屋には、そこそこ人の出入りがある。
近くで、ストリート・ミュージシャンたちが声をはりあげて、歌っている。
頑張り、熱意、声のデカさは認めるが、歌、うまくないんだけど・・・

年末のハナ金、忘年会のシーズン、真っただ中、
あちこち酔っ払いが大騒ぎしているわけでもない、
街はちょっぴり静かに、色で言えば、ダークなチャコールグレー。
そんな印象がした。

熱い日の出来事

2009-05-12 | 仕事
自分が若かった日々が、懐かしくもあり、愛おしい。
私は、熱く烈火を噴く活火山だった。
遠い遠い、過ぎ去りし日・・・


ある夏の暑い日、私は仕事で、ある人のお話を伺いに出かけた。
その人は、だんじり作りの職人さん。
年は、40歳ぐらいだろうか。
当時の私より、おそらく5、6歳ほど年上かと思われた。
私は慣れない仕事に、緊張していた。

薄暗い作業所で、その人は、黙々とケヤキを彫っていた。
名刺を差し出し、お話を伺う手順を踏む。
職人さんという職業そのままの、朴とつとしたしたその人は、
無口で、人と喋るのはあまり得意ではなさそうだった。

薄暗さに目が慣れ、彼の顔とまともに向き合った瞬間、
彼の目から発する光が刺さるのを感じた。
一瞬にして私は、その光を全身で受け止めた。

ピンと張り詰めたまま、細い、しかし強い光を放ち続ける彼と私は見つめ合った。
最初は閃光だったが、しばらくして視線が絡みついた。
それは、彼の瞳から、私の瞳へ、そして眼球の底を通って身体の隅々まで絡め取るように、
微妙な強弱、ジグザグを繰り返し、行ったり来たりした。

動物が獲物を見つけた時に発する、天性の武器にも似たその光は、
私の頭の奥を、鈍く痺れさせた。
力強い粘りや、濃度の濃いヌメリが混ざり合ったような質感を持っていた。
ラングドシャ(猫の舌)のような、ざらつき感も練りこまれていた。
私は、得体の知れないものが自分の中に、
生物が動いたような、どくっと脈打ったような、そんな気がした。
彼の浅黒い顔は、脂と汗が混じった様相で黒光りし、艶を放ち
筋肉質でがっしりした骨格、地道にもくもくと働く忍耐強さ、逞しさを持っていた。

独特の光の持つ魔力に、私は、ぐいぐい惹き込まれて行った。

ちゃんとお話を伺わなくては・・・
いったいどれぐらいの時間が経っているのだろう・・・
そんな目で見つめられると、どうにかなってしまう。
どうしてそんな濃厚な眼差しで、私を引き込むのか・・・。

ぬめぬめと、沼の奥に引きずりこまれそうになった。
絡め取られるその時まで、いつまでも引っ張り続けられそうだった。
一向に力を失わない光を放つ、その人の目を私は見続けた。


私は、本来、知的な紳士が好きなのだ。
学問や知識が、頭にぎっしり詰まった、そういう人が好き。
そして高尚な趣味を持つ人格者、崇高な人に憧れる。
ちょっと青白い、細長い繊細な指を持つ、スリムな人が好き、・・・なはずだった。
その逆に、ダイッキライなのは、無学で、弁の立たない、野卑な人。
汗とも埃とも区別がつかないような、黒くギラリと光る、
彼は、私の、理想とするタイプとは正反対だった。


情緒とか、品性とか、気配りとか、優しさとか・・・
そういう優等生的「女性らしさ」は、すべて、どこかに吹き飛んだ。
理性より、感覚的な五感でフルに、その空気を感じていた。
頭は、空っぽ、ということだろう。
彼を感覚だけで嗅ぎ取っていた。


あのとき、私はギリギリの崖っぷちのところに立ち、一触即発だったのだが、
なにしろ仕事の枠の中。
彼も私も、仕事を媒介に、向かい合っている。
もし、仕事でなければ、状況が違っていれば、
あの人が、ほんのひと触れでもしていたら、・・・・・


クールに冷静を保つ自分が好きだから、
特に恋愛は、男性に対して、自分が優位に立つポジションが好きだから、
今まで抑え込んできたもの、
一瞬にしてそれを崩すと、あとが修羅場になる。

幸か不幸か、チープな官能小説にあるような展開には、ならなかったので、
今日、こういうことを書けるわけだが・・・。
その時の、あの仕事は、今も思い出に強く残っている。
あの一瞬は、短くもあり、長くもあり、
もう一人の、別の自分の存在を知った瞬間でもあった。


私は今は、かなりの中古品。
多少の修理をしても、なかなか元には戻らない。
部品の在庫もなく、廃盤かも知れない。
知らぬは、自分ばかりなのかも知れない。


家庭の中の女性、家庭の外の女性 【4】

2009-04-01 | 仕事
仕事に疲れ果て、仕事のない世界(家庭)に逃げ込む人もいる。
家庭に入るのはいいが、仕事がなくなると同時にお金も入らない、となると、
家庭は理想的な逃避先になり得るのか?
それまで稼ぐために使っていた労力を、家事労働に切り替え、夫から労働賃金をいただく。
満足感たっぷりに暮らすには、家庭内労賃もたっぷり必要だ。
そうすると、労賃をたっぷり貰えるだけの、金額に見合った質の高い家事労働も必要だ。
希望通りに行かない低賃金になる可能性も、大いにあり得る。
相手によっては、共稼ぎでなければ、やっていけない場合もある。

「行ってらっしゃい」から「お帰りなさい」までのオンタイム。
「お帰りなさい」から「行ってらっしゃい」までの、家庭で一緒に過ごす時間。
高賃金に見合うだけの働きをしている奥サマは、どれぐらいいるのだろうか?
夫が汗水流して働いている間、奥サマ方は、高級レストランでランチ。
その一方で、低賃金でも、主婦の鑑のような妻もいる。

高い収入のある人は、ほとんどが、その収入に見合った能力があるからだろうが、
「たいしたこともないのに、高収入」ということも中にはある。
奥サマも、そう。
ステイタスに相応しくなるように、自らを律して、高める、自助努力が必要だ。

奥サマ、お嬢サマは、世の中の荒波に揉まれず、美しいまま時を重ねる。
それを真の美しさだと自負している方もおられる。
それはそれで結構なことなのだが、一歩間違えば、大きな勘違いになる。

ハナシが元に戻るが、
仕事の苦しさから逃げ出して飛び込んだ家庭も、お金のあるなしで、天国と地獄。
こんなことでは、仕事のほうがまだマシ、と、また仕事に復帰することもあるだろう。
またまた額に汗して、あくせく労働の毎日。
ああ、やっぱり仕事を辞めたい。でも、お金が必要。辞められない。
そして、苦しみ、もがいて、仕事を続け、気付く。
仕事をしているのは、なにもお金のためだけではないのだと。
その時にはじめて、奥サマや、お嬢サマには味わえない爽快感、達成感を味わう。
登山家は、山があるから登るんだそうだが、
登る苦しみを乗り越え、達する喜びがあるから、困難に挑戦し続ける。
奥サマや、お嬢サマは、仕事をしている人を気の毒に、と思っているかも知れないが
仕事をしている人は、逆に、
奥サマや、お嬢サマのことを、可哀想に・・・と思っているかも知れない。

あるいは、そんな達成感など微塵もなく、職場環境も最悪、いいことが一つもない、
ダイっ嫌いな仕事をし続けないといけない人生が、ほとほと嫌になる場合だってある。
その時は、奥サマ、いえ、お姫サマになりたいと願う。
そうやって駆け込んだ家庭が、また、思い通りには行かず、ああ、仕事の方がマシ・・・
堂々巡り。

駆け込めるところがある人は、いい。
家庭や仕事、両方でなくても、そのどちらかがある人は、幸せだ。
過酷な労働条件、低賃金で働く人、今日のことで精一杯の人、仕事激減、ハードな時代。
この深刻な不況で、定時制高校の志願者が一気に増えたらしい。
親に泣きつかれて、定時制高校に志望を変えた子供の気持ち、親の気持ち。。。
進学は、将来の仕事にも、大きく関わっている大事なことだ。

そんなにやたら大きな夢や、たくさんのお金がなくても、
ささやかな日常でも、平和に暮らせる基礎があれば、それでいい。
心身ともに健康であること。前向きであること。
その土台の上に、いろいろな花が咲く。





家庭の中の女性、家庭の外の女性 【3】

2009-03-31 | 仕事
社会の中は、複雑な面もあるが、ある面、単純な仕組み、構造にもなっていて、
同じような場所には、同じような人が集まる。
狭い範囲の自分の周りが全てだ、と思い込む人が多い。
そして、お互い、交わることのない層に対して、全く理解しようとしない。
別世界の、縁のない人々と捉え、視野の中に入らない。
異星人のごとく、無関心を貫く。

社会全体を見渡さない、自分の周りだけの小さな世界が、
全体にも通じると思っている人たち・・・
私は「マリー・アントワネット軍団」と名づけている。
マリー・アントワネットの実像には、いろんな諸説があり、
池田理代子さんの「ベルばら」では、いいかんじだけれど。
彼女は歴史のうねり、軋みに巻き込まれた被害者でもあるが、
ここでは、民衆の憎悪の対象となった、血税浪費のド派手生活をデフォルメして。
それと、お勉強が嫌いなところも。

自分と世の中の皆は同じではない、ということさえ、気づいていない。
閉ざされた社会に身を置いていると、見える範囲が限られている。
中でも、お金を稼ぐ必然性がなく、稼いだことがない上に、
お金の重要性を考えたことがないという、素晴らしい「ぬるま湯」は、
ものを見る目に大きな影響を与える。
(特別な心身上の理由がある人は別として)
もっと曇りのない大きな目で、世の中、世界を広く、深く、見渡して欲しい。

ぬるま湯から出ると風邪をひく、
自分を客観的に直視するのが嫌、
自分にとって、都合の悪いことには目をつぶる、
同じ環境の仲間と、どっぷり「ぬるま湯」を享受する、
まわりでワーワーおしゃべりしているだけで、本質には近付こうともしない。
その場限りの膨大な享楽時間を上っ面で楽しむだけで、
何かを考えている様子は、ほとんど感じられない。
わざと、考えていないフリをしているのか?
生活信条は、「何も深く考えないこと」なのだろうか?

曇りのない目で世の中を見ると、汚れたものも見える。
そのことで、純粋さが失われるわけではない。
いろんなものを知らないなら、知ろうとする姿勢も大事だ。
知った上で、自分の作ったフィルターをかけるのは自由だと思う。

人様には迷惑もかけていないし、攻撃もしていない。
自分を守って、どこが悪い。
まあ、それも人生。
人には人の道がある、とういうものだ。
他人があれこれ口出しするものでもないと思う。

が、私は、「世の中を知ろうとしない」方々は、苦手だ。