第39回兵庫県自治体学校・自治研集会が11月8日(土)午後2時~5時30分、神戸市勤労会館にて開催され、参加しました。三田の市議としては、私の他に1名の参加でした。
「安全・安心に暮らせる地域づくり」と題し、京都大学教授・岡田知弘先生による基調講演「憲法を生かし安全・安心に暮らせる地域づくり・・・「地方創生」・「地域消滅論」を越えて」を聞きました。
講演のほかには、報告として「養父市農業特区について」(藤原養父市議会議員)、「丹波市豪雨災害について」(西本丹波市議会議員)の2つがありました。
岡田知弘先生による「憲法を生かし安全・安心に暮らせる地域づくり」について
「はじめに」では、日本創生会議「ストップ少子化・地方元気戦略」(増田レポート)による一種の「ショックドクトリン」の効果を狙ったものであり、マスコミを使ったその狙いは、地方自治体の首長と議員の3種類の反応に表れている。<地方消滅>
1つは、「諦め」・・・平成の大合併で、地方が疲弊してしまっているところへ、今回の「地方消滅」ということによって、一種のあきらめとなって表れている。
2つには、疲弊した地方へ「地方創生」を「期待」する反応。・・・これまでより多くのお金が提供されるだろうとの期待。
3つには、散々苦しめられてきたうえに、「地方創生」といわれるが、かつての「西尾試案」の再来ではないかと「警戒と批判」すること。平成の大合併に反対し、「小さくても輝く自治体」として、地方自治を維持させ、むしろ地方自治の本旨が生かされている自治体にとって、人口1万人以下の自治体を強制的に統廃合させる気配を見せていることである。(かつて、この「気配」で一気に統廃合が進んだ「実績」があるから)
この「はじめに」の分析を聞いていて、改めて安倍政権の狙いをしっかり押さえることができました。彼(安倍首相)独特の「言い回し」(表現)とは裏腹に、180度違う方向を狙っていること、またどれだけ国民が批判の声をあげ(実際に国民生活や経済が疲弊)ても一顧だにしない強権的な手法で進めるやり方である。
次に、「道州制をめぐる混迷と第30次地方制度調査会答申」の内容と狙いを抑えることの重要性が指摘され、その指摘の通りのことが現在進行形で進んでいることを理解できました。
「戦争ができる普通の国」をめざす、安倍首相が目指す国の形と「道州制」、安倍流「富国強兵国家」の意味すること。
最大の障害物としての「憲法9条」を「閣議決定」で解釈改憲をしたこと。しかし、国民の強い反発で内閣支持率の低下が顕著となってきており、関連法案については、来春の統一地方選挙後へと先送りしている。
支持率の回復を狙っての「地方創生」や「女性が輝く社会」を持ち出してきている。(その中身は、真逆であるが)
「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」として、構造改革の目標としてのTPPと道州制である。<竹中平蔵発言の方向性>・・・養父市などにみられる「農業特区」にあるように、規制を取っ払って、企業の参入・企業の利益優先をめざしている。しかし、企業はもうからないとわかれば、さっさと引き上げる実態。(尼崎のパナソニックは正に典型)
・税優遇・・・法人税率の引下げ
・土地法制・・・農業特区にみられる、農業委員会の権限を取り上げ、首長に権限を集中させる。
・労働法制・・・解雇の自由化、外国人の受け入れで安い労働力を得る。また「派遣法」の「改悪」で一生涯派遣による企業の人件費削減へ。
・・・・・実は、これによりTPPや道州制を構想したものである。
これらの根本を押さえると安倍政権の狙いが大変わかりやすくなってきます。
ところが、その狙い通りとはなっていないことも事実。「道州制推進基本法案」が自民党内でもまとまらない状況が起きています。
1つは、小泉内閣・第2次安倍内閣の下で進めた市町村合併、構造改革の矛盾が深刻になってきていることが誰の目にも明らかになってきています。
2つは、東日本大震災で地方整備局などの国の出先機関(国はこれを廃止しようとしているが)の評価が高まっている実態。
3つは、その目的とは裏腹に、市町村合併を伴う道州制や地域産業をさらに衰退させるTPPや消費税増税への反発・不安が議員や地方自治体関係者に拡大してきている。来春の統一地方選挙に与党が不安を抱いている。
4つは、橋下「大阪維新の会」の支持急落に表れていること。
5つは、これまでの地方分権改革を進めてきたブレーンの多くが道州制に反対ないし慎重意見を表明しだしたこと。その代表に、第30次地方制度調査会会長を務めた西尾勝氏自身である。
*こうした中で、一つの変化が表れてきていることと、間違った視点が依然として進められていることをつかむことが重要。
変化・・・① 小さい自治体が残ることを認める変化。 ② 県の役割を積極的に認めるようになってきている変化。
間違った視点・・・経済成長の視点のみで大都市の持続性をとらえ、「集約とネットワーク」の形成を求めようとしている。(人口と経済が大都市、東京に集中し、ますます地方の疲弊となっている。首都圏と地方の格差拡大へ)
*今年5月14日成立した「都市再生特別措置法」(コンパクトシティ都市法)改正は、もともとEUで行われている「コンパクトシティ」とは違った形で進めようとしている。
本来のコンパクトシティは、「歩いていける都市計画をすすめ、それを全国に広げていくことで、一部の地域だけでなく、その国がどこにいても住みやすい都市にしていくこと」である。
ところが日本では、リニア新幹線建設を大前提に三大都市圏を結合した「スーパーメガリージョン(Super Mega Region)」形成と「コンパクト + ネットワーク」による「高次地方都市連合」で人口30万人程度の都市を形成すること、さらに「小さな拠点」整備(全国に5000か所)を創ろうとし、そこをコンパクトシティ形成を図ろうとしている。
ここで、気を付けないといけないことは、こうした間違った「コンパクトシティ」の発想で、地方自治体の中で「歩いていける便利な地域」(コンパクトシティ)と逆に集約に取り残された不便地域がさらに不便となる地域ができてしまうことです。三田市でもそのことが起きかねないような状況を危惧します。
⇒ 「地方中枢都市」のモデルとされた浜松市では、工場閉鎖と大規模市町村合併によって、周辺部・中心部で人口減少が加速し、人口流出が止められない状況。また、東京都より大きな地方自治体となった、高山市で深刻な過疎化が進行している地域。
こうした実態や、政府の狙いをしっかり押さえることの重要性と、今後の私たちの取組方向としては、
- 小規模自治体に学ぶ地域づくりと自治体の役割が重要。
「一人ひとりが輝く地域づくり」を目的に、地域内経済循環と住民による村(街)づくりにより、お年寄りを大切にした高福祉・低負担の長野県栄村の取組を学ぶ。
地球環境問題への地域からの取組・・・宮崎県綾町、徳島県上勝町など。
団体自治・住民自治を活かした地方自治の原点に立つ。
地域自治の基盤づくりの取組が重要
中小企業振興基本条例(31道府県を含む150自治体)の策定
公契約条例(16自治体)の策定でワーキングプアをなくす
横浜市条例による契約担当、区ごとに公表される地元中小企業発注実績・・・地元企業への発注状況を議会へ報告義務を課している。これにより、役所内で競って地元企業へ発注がなされ、地元が元気になっている。
憲法を暮らしに生かす
足元から住民の命を守り、人間らしい暮らしを再生・維持する持続可能な地域づくり(東日本震災を経験する中で再認識されてきたこと)、大飯原発差し止め訴訟判決の画期的意義として、「憲法に基づく人格権を最高の価値と宣言」で、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富」をしっかり押さえ、自治体でこそ実践していくことの重要性。
農林業・自然エネルギーの重要性・・・地域内再投資力の強化と国土の持続的発展のための都市と農村の連携強化を合わせて追及することが必要。
こうした基本を押さえ、具体的に三田市でどのように取り組んでいくのか、一歩ずつでも進めていきたいと思います。