研修二日目の第一講座は、「介護保険の改定と自治体の課題」と題して、服部万里子氏(服部メディカル研究所所長)による研修を受けた。
消費税の8%への引き上げと併せ、介護保険の在り方が大きく変えられようとしている。「介護の社会化」として導入された介護保険制度から、必要な介護が受けられなくされようとし、それに伴い、自治体の対応が求められる。
それは、自治体に暮らす住民の「生存権」と「幸福追求権」の確保をすることである。
社会保障国民会議報告書が示すもの:
・要支援 → 地域支援事業へ
・介護報酬・診療報酬の系統的見直し (一体化へ)
・高所得の介護負担1割 → 2・3割負担へ
・施設補足給付に資産要件
・特養は、要介護3以上へ、通所は重度化予防に重点へ
など。
これらによる問題点:
・介護予防・日常生活支援総合事業(多様な担い手・多様なサービス)
⇒ しかし、問題は「専門職が入れないことで、症状がかえって悪化してしまう」
・自己負担2倍を提案(所得金額kを160万円相当以上)
⇒ 年金収入では280万円以上にあたるが、これが高所得と言えるのか?
机上の計算である。
・「世帯分離しても配偶者が課税の場合は対象外」や「非課税年金(遺族年金・障害も年金)も収入に換算する。
⇒ 現場の具合的事例から見る必要がある。
*消費税率のアップに伴い、自費負担が増加へ(利用料金の負担増)
自治体の課題:
・人材不足で訪問介護サービスは2極分化 ⇒ 小規模が大企業へ吸収
これにより、サービスの選択幅が減少へ
・大規模化、多サービス事業、パッケージ化は企業の論理だが、ケアプランの吟味なく導入すると自己負担の増加、悪化につながる
・生き残りをかけた隙間ビジネスの横行 ⇒ 質の低下へ
・介護難民の増加 ⇒ 生活保護や低所得者対策、未払い、困難事例対応に追われる
・自治体の使命は何か? ⇒ 市民の生存権と幸福追求権の確保=尊厳ある生活・介護の提供を保障すること
*ここでポイントとなるのが、医療・在宅の連携とそれに伴う家族支援のケアマネジメントと多職種連帯である。
研修二日目の第2講座は、「子ども・子育て新制度の実施を前に」と題して、佛教大学教授・杉山隆一氏による講義であった。 一口にいって介護保険制度を基本的にまねたものであるが、大変複雑で分かりにくい。「保育」の有り様が大きく転換されることになる。
1.「子ども・子育て関連3法」をもとにして、「子ども子育て支援法」
・新制度の基本: 「保育に欠ける子ども」への保育給付としての「現物給付」から、利用料に追加して「現金を給付」することへ。(個別利用者補助金ともいう)
これにより、保護者は現金と保育料を合わせて保育所を選択し、「直接契約」をして保育所を利用することへ。<対象: 認定こども園・新制度に入った幼稚園・保育所>
2.これまでの「自治体は保育の実施義務をもつ」から、「保育の必要性」を「認定」することへ、大きく変更。
3.給付額の認定と負担では・・・
施設・事業種類ごとに「公定価格」を定める<現在国によって作業中>
「施設型給付費」と「地域型保育給付費」の2種類へ。
「保育料」・・・施設が徴収し、滞納につては施設の責任となる。(ただし、保育所は自治体が徴収、差し押さえ)
4.これまでは、幼稚園も保育の考えで進めてきたが、「3歳以上」は「教育と保育を区分」
⇒ 「認定こども園」
5.児童福祉法改定における保育園の位置づけへ
①「児童福祉法24条」の復活で、
1項: 市町村の保育実施義務(を復活させた)
2項: 市町村は・・・認定こども園・家庭的保育等を「整備」 ⇒ 整備を求めているだけ
* 2項は、支援法による「直接契約」と「施設型給付費の交付」を振り分けている
②保育所入所手続による支援法の復活で、
自治体は、保護者の申し込みを受けて利用調整(斡旋)をする・・・これは、あくまで「斡旋」(行政指導)であって、従来の「行政処分」ではない。
*これにより、行政不服審査の適用は受けないことになる!
*国は、利用調整を通じて24条1項を選択するように誘導する。その結果、
24条1項の形骸化を招くことになる。<自治体の保育実施義務の形骸化へ>
6.企業による認定こども園と小規模保育事業の拡大へ
地方裁量型は認可外保育所で定員20名以上が条件となり、企業が認定こども園として参入へ。
保育所型も企業参入ができ、小規模保育事業も企業参入が可能となる。
7.民間保育所の委託費
「保育必要量」により、給付額が異なり、「保育標準時間」と「保育短時間」では給付額が異なる。(委託費は支援法27条により、施設型給付費を束ねた額となる)
8.施設助成の問題
児童福祉法56条の2で、幼保連携型認定こども園は、施設助成を受けられない。
<施設者の負担主義>
*自治体が取り組む事項と課題・・・基本的に、今年6月までに条例策定へ
①保育の必要性の認定に関する条例
②特定教育・保育施設に関する「運営の基準」の条例
③地域型北事業者の認可の基準に関する条例
④保育料徴収基準の条例
⑤幼保連携型認定こども園の認可の条例
⑥放課後児童クラブの「施設と運営の基準」に関する条例
*国は、政令・省令を出すが、詳しい内容は示さない。
*保育の必要性の「認定」にあたって、留意する点:
「市町村の判断により保育を必要と認めたもの」とあるが、「親の就労状況」だけでなく、「子どもの実態・視点」から求めていくことが重要。
「育児休暇中の子どもの北を保障できること」・・・少子化対策として、育児負担の軽減からは、保護者が選択する場合は、引き続き同一の保育所で保育を受けることができるようにすること。
*放課後児童クラブに関して留意する点:
・「保育の資格」を不要としないように求める
・国の基準では、40人を1集団とする(「1施設」でない)ため、1施設であっても、40人を超えても2グループに分けて1施設での保育でよいとする(三田で該当は?)
*自治体ではすでに「ニーズ調査」を終え、準備を進めているが・・・
① 児童福祉法24条1項(保育の実施義務)を重視し、事業計画に盛り込むこと
② 住民にきちんとした説明
が必要。
研修二日目の第3講義では、自治体職員・神田敏史氏による「そもそもの仕組みから学ぶ高い国保料」と題して講義を受けた。
国保の歴史から学び、他の医療保険制度との比較をする中で、「所得に占める負担率」をみると、いかに市町村国保料(税)が高い負担率となっていることがわかる。
市町村国保は、負担率9.9%であるのに対して、共済組合は4.9%、組合健保は5.0%
、教会けんぽは7.2%となっている。
現状では、収入の少ない住民が加入しているのが実態であり、高い負担となっている。
社会保障制度の基本的在り方としてとらえることが重要。
国は、「プログラム法」により、
①今後増加する医療費の抑制、②これをコントロールするために、都道府県を保険者とする広域化を予定している。
こうした中で、地方でできること、地方からの声を発信することが重要となっている。