株式会社が運営している神奈川県内の保育園Aでは、2012年3月に7人の保育士が一斉に退職しました。緑河まりんさん(25歳=仮名)はその一人。「給料が安すぎる。円のやり方についていけない。理由はみんな同じでした」<o:p></o:p>
正規の保育士は12人しかおらず、6割が退職する事態でした。保護者から不満の声が相次ぎました。「『営利追求の保育園に愛想が尽きた』と保護者にはいえず、みんなで相談して『結婚するから』とうそを言った」と緑河さんは苦笑します。 緑河さんの月給は手取りで約14万円。賞与は夏と冬に1万数千円ずつしか出ませんでした。 書類の作成や行事の子ものつくりが終わらないときは、帰宅後に働きました。「『残業代を出しすぎると本部から文句が来る』と園長に言われました」
生活は苦しく、給料日の1週間前に一人暮らしの同僚が「500円しかない」と窮状を訴えるほどでした。<o:p></o:p>
コスト削減のため給食も粗末でした。から揚げなら子どもは1個、保育士は3個だけ。子どもも保育士もおなかをすかせていました。<o:p></o:p>
緑河さんは社会福祉法人の認可保育園に移り、環境の違いを肌身で感じました。賞与の額が増え、残業代も出るため、手取りの給料は年間50万~60万円増えました。<o:p></o:p>
なにより驚いたのは子どもたちの様子でした。プール付の園庭で泥にまみれて遊ぶ子供たちは決して「疲れた」とは言いません。広い室内を走り回り、集団で遊び、喧嘩も日常茶飯事。その分「思いやりが育っている」と感じます。<o:p></o:p>
A園は対照的でした。マンションの2階と3階の狭い部屋で、走ることもできません。保育士にとって子どもは「お客様」。けがをすれば問題だとされ、おとなしく座らせることに力を注ぎました。<o:p></o:p>
子どもはおもちゃで個人遊びをするしかありません。「これば僕のもの」と囲い込むことが流行しました。<o:p></o:p>
園庭もなく、たまに公園に連れ出すと「疲れた」「帰りたい」を連発しました。<o:p></o:p>
留守の多い園長と主任を除き、保育士は全員20代と30代前半。相談相手にも恵まれませんでした。<o:p></o:p>
「何のために働いているのか」。緑河さんは毎日がむなしかったと語ります。<o:p></o:p>
しかしいまはー。<o:p></o:p>
「保育は人間の心を育てるもの。自分の一番いい部分を絞り出して愛情を注ぐもの」。胸を張って帆ころを語るベテランに囲まれ、「楽しんでへとへとになっています」。<o:p></o:p>
2013年7月17日付「しんぶん赤旗」より<o:p></o:p>