いよいよ梅雨明けが近づいてきた。天気予報を見ると、晴れマークが続いて出るようになった。いつ梅雨明けが発表されてもいい環境が整ってきた。梅雨明け10日、と言われこの時期を待って登山の計画がスムーズにいく。登山を趣味にするものには、待ち遠しい季節である。夕刻、本屋に行く。いつものブックオフでなく、新刊が買える書店だ。AIチャットなど最近のトレンドを読む、新しい話題の本は書店でなければならない。チャットGPTについての解説本が平積みで3種類並んでいる。関連した本で見つけたのは、斉藤孝『超AI時代の頭の強さ』と若宮正子『88歳、しあわせデジタル生活』の2冊だ。
80歳を過ぎて、これらの本に注目するのは理由がある。これからの生活に、デジタルやAIを役立てられないか、という考えを持っているからである。最近、感じていることは、デジタルのラインやブログでの人とのつながりだ。もしスマホやパソコンというツールがなかったら、自分の今の生活がいかに味気ないものであったろうか。ひ孫の成長が、日々更新されて、動画となって送られてくる。この一つだけのことでも、どれほど暮しに潤いがあるか。過去の老人にはなかったことである。死んだ義母に届けられたのは、孫の手書きの手紙であった。敬老の日や誕生日、手書きの孫の絵と文字がどれほどの慰みであったか。想像を超える。自分たちの今は、これに比べてはるかに濃密な通信だ。
斎藤孝はこの本のなかで、現在のAIの進化を、幕末の黒船到来と比べている。新しい時代の到来に、自動機織り機を打つ壊した、産業革命の時代の動きも解説している。この時代にこそ大切にしたい「智仁勇」という言葉を、佐藤一斉の『言志四録』から引いている。「智仁勇について、実際に行う難しいと人は言う。しかし、人の上に立つ者は人びとをよく治める義務がある。つまり悪事を明らかにし(智)、孤児ややもめを憐み(仁)、強暴な者をこらしめる(勇)。この三つを実際に行わなくてはならない。」
AIの時代に論語。不思議に思える取り合わせだが、価値観が大きく転換する時代にこそ、人々は頭脳を整理し、しっかりと心を落ち着かせ、冷静に対処することこそが求められる。西郷隆盛、江藤新平といった維新の傑物の時代にあった対処の仕方が取り上げられている。この混沌した現代に、どんな救世主が現れるか。見届けたいものである。