朝、蝉の鳴き声のなかを歩いた。季節は大暑から、立秋(8月8日)へと向かっているが暑さが本格化するのはこれかららしい。知人との会話に、「暑さが積もる」という言葉が出てきた。「雪が積もるのも嫌だけど、暑さも積もって欲しくない」と、孫のような女性が言った。35℃超えの気温は、日本だけのことではないらしい。国連の事務総長の言葉がショッキングだ。地球は温暖化の時代から沸騰の時代に入った、と演説している。声高にカーボンニュートラルが叫ばれるが、今日から地球全体で一酸化炭素の低減を始めても、効果を生むまで数十年かかるらしい。やはり、暑さに適応する生活を工夫する以外に、生き延びる方法はなさそうだ。
高村光太郎の『道程』より。
あつき日
ぢりぢりと啼きかけてはまた
何か憚る初生な小胆な油蝉
(中略)
東京の場末の青物市場には玉葱がむせ返り
ぶとはただれた馬の腹にすひつき
太陽は薄い板のやうなものにて
わが横面をぴしりとうつ
それでも、空には雲がだいぶ出ている。風が吹いて部屋に入ると、思った以上に涼しいような気もする。ドラッグストアで求めたヒンヤリグッズを、首に巻いて暑気を追う。そういえば、去年買ったハンディ扇風機も、机の上に眠ったいる。取り出してスイッチを入れると、頼りない風が顔にあたる。
今日で7月が終り、明日から新しい月が始まる。立秋から、9月の彼岸まで、一年で一番暑い日もあっという間に過ぎるだろう。夜の睡眠をしっかりとることが、暑さを乗り切る一番の過し方だ。