
冬のごちそうといえば、何といってもどんがら汁だ。日本海であがる寒鱈、内臓や頭、骨などつまり粗の部分を大鍋で煮込んで熱々のところを味噌味でいただく。寒い季節に、体が芯から温まる浜料理だ。身は別にして料理されるので、骨や頭についてごく少ない部分しかない。それでも骨についたところは、何とも言えずおいしい。その上に、肝臓や白子などが、この鍋にぜいたくなうまさをつけ加える。
どんがらとは、寒鱈の胴とがらを意味する。ガラも内臓も残さずに食べつくす、庄内浜に伝わる漁師料理であるらしい。秋田から青森に行くと、同じ鱈なべでもザッパ汁と呼ばれる。もう20年も昔のことだが、酒田に住む知人にどんがら汁を準備してもらい、山形から3名ほどで寒鱈を食べに行ったことがある。知人がいうには、鱈を食べるには、予約が必要ということであった。浜辺でなければ、理解できないことである。つまり、本当においしい鱈を食べるには、その日の朝、浜に上がったものでなければダメということであった。
行ってみて、なるほどと思った。白子や肝臓は刺身で食べるのだ。もちろん鍋にこれらを入れるが、一番いい部分を刺身にして食べた。その初めての珍味は、いまでも忘れ得ない。豆腐やネギ、岩海苔に酒かすを加えるが、調理法は新鮮な鱈さえ手に入れば、家庭で好みの味付けで十分に美味しい。一番寒い寒の季節を乗り切る温かい食べ物だ。