大好きな彼との待ち合わせ。彼女は、この待ち時間を気に入っていた。だから少しだけ約束(やくそく)の時間より早く行く。そして、ドキドキしながら彼の到着(とうちゃく)を待つのだ。
彼女は待ちながら、今日の服(ふく)は気に入ってくれるかな? とか、髪(かみ)を少し切ったの気づいてくれるだろうか…。そんなことを考えていると、時間はあっという間に過(す)ぎていく。そして、ずっと向こうから歩いて来る彼を見つける。思わず頬(ほお)がゆるむ瞬間(しゅんかん)だ。
でも、現実(げんじつ)は思い通りにはいかない。彼女は腕時計(うでどけい)を見る。約束の時間を10分も過ぎている。彼女は呟(つぶや)く。「今日もまた遅刻(ちこく)? もう、許(ゆる)さないから」
そう言いながらも、彼女は楽しそうだ。彼を待つ時間が、今日も少しだけ増(ふ)えたのだから。普通(ふつう)の娘(こ)なら怒(おこ)って帰ってしまうかもしれない。でも、彼女は大(おお)らかな性格(せいかく)だ。どんなことでも良い方に考える。たとえ、彼が彼女の服を褒(ほ)めなくても、髪を切ったことに全く気づかなくても、多少の遅刻すら笑って許(ゆる)すことができる。
でも、これってどうなの? 彼女の顔が一瞬曇(くも)った。私って本当に彼に愛されているのかな? 都合(つごう)の良い女になってるだけじゃ…。彼女は心の中で葛藤(かっとう)する。でも、彼が遠くから駆(か)けて来る姿(すがた)を見つけると、そんなことすぐに頭から消えてしまうのだ。やっぱり、彼女は彼を愛している。心から愛しているのだ。
<つぶやき>あなたの彼女もこんなことを考えているかもしれません。褒めてあげてね。
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