みけの物語カフェ ブログ版

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0475「しずく10~おんぼろ」

2019-02-28 18:39:21 | ブログ連載~しずく

 そのアパートは二階建(だ)てで、昭和(しょうわ)って感じの建物(たてもの)だった。トタン張(ば)りの屋根(やね)や外壁(がいへき)には錆(さび)が浮(う)き出ていて、それが奇妙(きみょう)な模様(もよう)になっている。ちょうど西向きに建っているせいで、今の時間、夕日に染(そ)まってセンチメンタルに輝(かがや)いている。
「こんなところに、人が住んでるの?」月島(つきしま)しずくは思わず呟(つぶや)いた。
 部屋の番号は201になっている。だとすると二階なのか? しずくは二階へ上がる階段(かいだん)の前に立った。長い間、風雨(ふうう)に晒(さら)されていたのだろう。補修(ほしゅう)もしていないようで、ここもかなり錆びついている。ところどころ鉄板(てっぱん)が腐食(ふしょく)していて、小さな穴(あな)が空(あ)いているのが見えた。かなり危険(きけん)な状態(じょうたい)になっている。
 しずくは恐(おそ)る恐る階段を昇(のぼ)り始めた。階段は、踏(ふ)みしめる度(たび)にギシギシと嫌(いや)な音をたてた。しずくは心の中で呟いた。
「大丈夫(だいじょうぶ)、大丈夫よ。彼女だってここを使ってるんだから…」
 階段の中程(なかほど)を過ぎたところで、突然(とつぜん)、「止まって!」と上の方から鋭(するど)い声がした。
 しずくは上げた足を止めるために、必死(ひっし)に手すりにしがみついた。上を見上げると、そこには寝巻姿(ねまきすがた)の神崎(かんざき)つくねが立っている。つくねは穏(おだ)やかな声で言った。
「そこに足を乗(の)せると落っこちるわよ。気をつけて上がって来て」
「そ、そうなんだ。…分かったわ。気をつける。これくらい、平気(へいき)よ。私……」
<つぶやき>つくねはどうしてこんな所に住んでいるんでしょうか? 謎(なぞ)は深まるばかり。
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