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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0469「距離を縮める」

2019-02-22 18:43:17 | ブログ短編

 彼は手にじっとりと汗(あせ)をかいていた。緊張(きんちょう)のためか口の中はカラカラになっている。彼の目の前には、思いを寄(よ)せている彼女がいた。彼は震(ふる)える声で言った。
「あの…、今度…、今度、僕(ぼく)と…、あの……」
 彼はそこで言葉(ことば)をつまらせた。ダメだ。何で肝心(かんじん)なことが言えないんだ。
 彼女はたまりかねて訊(き)き返す。「私に何かご用(よう)ですか?」
 彼女の目が、じっと彼を見つめる。今、彼女は自分の言葉を待っている。そう思っただけで、彼の緊張はピークに達していた。その時だ。彼は友だちからの助言(じょげん)を思い出した。
「目の前に大好(だいす)きな彼女がいると思うから緊張するんだ。カボチャだと思え。目の前に立っているのはカボチャだ。カボチャだったら何でも言えるだろ」
 彼は、ついに口を開いた。だが、その言葉は――。
「僕はカボチャが大好きです!」
 彼は思わぬことを口にして、呆然(ぼうぜん)と立ちつくしていた。もう……終わった。これで完全(かんぜん)に変な奴(やつ)だと、彼女は思ったに違(ちが)いない。でも、彼女はそこでクスッと笑って言った。
「私もカボチャは好きですよ」
 彼は、彼女の笑顔を見てホッとした。彼女との距離(きょり)が少し縮(ちぢ)まったような気がした。
<つぶやき>つかみはOK。あとは自分の気持ちを伝えましょう。結果(けっか)がどうなるかは…。
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