みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0452「とりあえず」

2019-02-01 18:36:24 | ブログ短編

「ねえ、私のことどう思ってるの? はっきり聞かせてよ」
 愛子(あいこ)は義之(よしゆき)を前にして、真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)で言った。二人は付き合い始めて三年目。もう結婚(けっこん)を考えてもいいはずだ。彼女がいくらそれを匂(にお)わせる行動(こうどう)をしても、彼は全く気づかない。というか、気づかない振(ふ)りをしているのかもしれない。ここで彼の口癖(くちぐせ)が出る。
「まあ、その件(けん)はとりあえず…」
「あなた、いっつもそう。とりあえず、とりあえずって、そればっかし」
「ちょっと待てよ。だから、今はホラ、お互(たが)い仕事(しごと)が忙(いそが)しいし、もう少し…」
「じゃあ、いつよ。そんなこと言ってたら、結婚なんて」
「でも、こういうのはタイミングっていうか。慌(あわ)ててしなくても…」
「今がそのタイミングでしょ。なにグダグダ言ってるのよ。はっきりしなさいよ」
「そうだね、君の言い分も分かるよ。じゃあ、とりあえず何か食べに行かない。俺(おれ)、もうお腹(なか)ペコペコで…。食べてからゆっくり考えるということで。とりあえず…」
 愛子は呆(あき)れてしまった。この男は、私より食欲(しょくよく)を優先(ゆうせん)するんだ。愛子は言った。
「あなたにとって、私は何なの? それだけ先(さき)に聞かせてよ」
 義之はつい言ってしまった。「だから君は、とりあえずキープしてる――」
 愛子は義之を引っぱたくと、くるりと背(せ)を向けスタスタと行ってしまった。
<つぶやき>女性をあまり待たせるのは良くないかも。真剣に向き合わないといけません。
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