みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0466「嘘の鎧」

2019-02-17 18:25:07 | ブログ短編

「えっ! 別れたの? 何でよ、あんな良い人――」
 友だちに彼と別れたことを話すと、必(かなら)ずと言っていいほど返ってくる反応(はんのう)だ。確(たし)かに、彼は良い人よ。そんなこと私が一番よく分かってる。でも、仕方(しかた)ないじゃない。そういうことになっちゃったんだから。私は平気(へいき)な風(ふう)をよそおって、今の彼のことを自慢(じまん)する。
「今、付き合ってる人はね、すっごく格好(かっこ)いいんだよ。私のこと、とっても大切(たいせつ)に――」
 そんなの嘘(うそ)だ。今の彼は見た目がいいだけで、私のことなんてこれっぽちも考えてなんか…。別れた彼は、一緒(いっしょ)に歩いている時は、ちゃんと私の歩幅(ほはば)に合わせてくれた。私が困(こま)っている時は、どんなに仕事(しごと)が忙(いそが)しくても助(たす)けてくれた。私のしたいことを、嫌(いや)がらずに付き合ってくれた。私の…、私の…。
 私は、自分のことばっかりだ。彼の優(やさ)しさに甘(あま)えて、それが当たり前だと思っていた。だからだ。だから、彼は私のこと嫌(きら)いになって…。全部、悪(わる)いのは私…。彼と別れて、初めて気づくなんて。鈍(どん)くさいのは、私の方だったのよ。でも、私は――。
「それでね。今度、彼と旅行(りょこう)に行こうと思ってるんだ。いいでしょ」
 また私は嘘をつく。本当(ほんと)は、旅行なんか行きたくないのに。私は嘘をつくのが上手(うま)くなった。本当の自分を誰(だれ)かに見せるのが恐(こわ)いのかもしれない。嘘の鎧(よろい)に身を固(かた)めて…。こんな私でも、嘘の鎧を脱(ぬ)がせてくれる、そんな人が現れるのかな?
<つぶやき>自分が変われば、今まで気づかなかったことが見えてくるかもしれません。
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