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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0415「変態」

2018-12-23 19:12:56 | ブログ短編

 彼は不思議(ふしぎ)な夢(ゆめ)を見た。裸(はだか)の人間が背中(せなか)を丸(まる)めて座(すわ)っている。それをじっと見ていると、パカッと音がして、その人間の背中の皮膚(ひふ)が破(やぶ)れ、中から化(ば)け物が飛(と)び出して来た。
 そこで彼は飛び起きた。――何となく頭が痛(いた)い。身体中(からだじゅう)、ぐっしょりと嫌(いや)な汗(あせ)をかいている。彼はベッドから出ると汗を拭(ぬぐ)った。窓(まど)からは気持ちのいい朝日が差し込んでいる。
 ――台所(だいどころ)では母親が朝食の支度(したく)をしていた。彼は水を一杯飲むと食卓(しょくたく)についた。首筋(くびすじ)から背中の辺りが、何だかむずがゆく嫌(いや)な感じだ。彼は、手を伸(の)ばして背中を掻(か)き出した。
 その様子(ようす)を見ていた母親が声をかける。「かゆいの? 見てあげるわ」
 母親は、彼のTシャツを脱(ぬ)がせると背中を見た。そこには、背骨(せぼね)に沿(そ)って一筋(ひとすじ)線が入っていた。母親は息(いき)を呑(の)んだ。そして、大声で家族(かぞく)を呼び集めた。
 彼を中心(ちゅうしん)にして、両親(りょうしん)と姉(あね)二人が取り囲(かこ)んだ。手にはそれぞれ大きな網(あみ)を持っている。
 彼は不安(ふあん)になり言った。「みんな、どうしたんだよ。何してるの?」
 母親は優(やさ)しく答(こた)える。「大丈夫(だいじょうぶ)よ。変態(へんたい)が始まったの。これで、あなたも大人(おとな)になるのよ」
「なに言ってんだよ。俺(おれ)は…」彼はさっきの夢のことを思い出して、「まさか、あれは俺?」
 突然(とつぜん)、彼の身体が不自然(ふしぜん)にカクカクと動き始めた。母親が叫(さけ)んだ。
「みんな、逃(に)がしちゃダメだからね。無傷(むきず)で捕獲(ほかく)するわよ」
 みんなは身構(みがま)える。彼は背中を丸めた。そして、パカッと音がして――。
<つぶやき>恐(こわ)いです。何が飛び出してきたの? この人達はいったい何者なんでしょう。
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