「私を呼(よ)び出すなんて、どうしたの? また、振(ふ)られちゃったのかなぁ」
麻美(あさみ)はヘコんだ顔をしている由香里(ゆかり)に言った。由香里は強がって見せて、
「そんなんじゃないわよ。あいつは、あたしにはふさわしくなかっただけ」
「アンタさ、顔とスタイルはいいのに、どうして長続(ながつづ)きしないんだろうね」
「もう、あたしの周(まわ)りにはロクな男がいないだけよ。向こうから付き合ってくれって言ったくせに…。何でこうなるのかなぁ」
「性格(せいかく)ブスってことじゃない。ギブアンドテイクよ。恋愛(れんあい)は、もらってばかりじゃ…」
「冗談(じょうだん)じゃないわよ。このあたしが付き合ってあげてるのよ。あたしの言うことを聞くのは当たり前でしょ。そんなことも分からないなんて…」
由香里は自己中心的(じこちゅうしんてき)なところがある。自分のしたいことをして、相手(あいて)にもそれを押(お)しつける。でも、麻美は自分の思っていることは、はっきり言う性格だ。だからなのか、由香里は麻美にだけは、自分の弱っているところを見せられるのかもしれない。
「その性格、直(なお)した方がいいよ。このままだと、一生(いっしょう)ひとりでいることになるよ」
「別に…、男なんていくらでもいるんだから。あたしが街(まち)を歩いただけで――」
「でも、ひとりなんでしょ。若(わか)いうちはいいかもしれないけど、そのうち誰(だれ)からも相手にされなくなっちゃうから。今なら、まだ間(ま)に合うよ。私も手伝(てつだ)ってあげるから、ねっ」
<つぶやき>自分のことだけ考えていると、周(まわ)りのことが見えなくなってしまいますよ。
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