みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0402「バンパイア」

2018-12-07 18:32:35 | ブログ短編

 街頭(がいとう)に立っている若い男。前を通り過(す)ぎていく女を目で追(お)っていた。そして、一人の女に目をつけて後(あと)を追いかる。人通りがなくなると、男は後から女に声をかけた。
 女は何気(なにげ)に振(ふ)り返ると、そこにイケメンの男がいたので驚(おどろ)いた顔をする。男は、
「突然(とつぜん)のお願いなんですが…。献血(けんけつ)をしていただけないでしょうか?」
 女は、こんなイケメンから声をかけられたことがなかった。だから、つい言ってしまう。
「ええ…、いいですよ。私でよければ…。で、献血はどこで?」
「えっと、その前にこの契約書(けいやくしょ)にサインをいただけないでしょうか? 決(き)まりなんで」
 女は契約書を見てみたが、外国語(がいこくご)で書かれていたので全く読めない。女が躊躇(ちゅうちょ)しているのを見て、男はにっこりと微笑(ほほえ)んだ。女はそれを見て、思わずサインをしてしまう。
「これで契約は成立(せいりつ)しました。ありがとうございます」
 男は契約書をポケットに滑(すべ)り込ませると、女に近づき彼女の目を見つめて、
「では、いただきます」と女を両腕(りょううで)で優(やさ)しく抱(だ)きしめた。そして首筋(くびすじ)へ口を持って行く。
「ちょっと待って!」女は突然叫(さけ)んだ。「あなた、こんな私でいいの?」
「はい。美人(びじん)じゃなくても、血(ち)の味(あじ)は変わりませんから。血の契約通り、一口だけいただきます。痛(いた)くはありませんし、傷口(きずぐち)も二、三日で治(なお)りますから、心配(しんぱい)はいりません」
<つぶやき>現代(げんだい)の吸血鬼(きゅうけつき)は、血を吸(す)うにもいろんな手続(てつづ)きを踏(ふ)まなくてはダメなのです。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする