みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0411「ロマンス」

2018-12-16 18:22:38 | ブログ短編

 彼女はいつもつまらなそうにしていた。何をしていてもワクワクするものがないのだ。彼女は、暇(ひま)さえあれば空(そら)を見上げていた。そして呟(つぶや)くのだ。
「あたしはここにいるよ。早く見つけて。あたしを迎(むか)えに来て…」
 ある日のこと。帰り道で彼女が星空(ほしぞら)を見上げていると、後から声をかけられた。
「星が好きなんですか? 僕は月が大好きなんです」
 彼女が振(ふ)り返ると、そこには背(せ)の高い若い男が立っていた。まさに、彼女の理想(りそう)のタイプだ。こんな出会(であ)いがあるなんて、彼女は自分(じぶん)の目を疑(うたが)った。男は言った。
「月は地球(ちきゅう)から少しずつ離(はな)れているんですよ。いつか地球の重力(じゅうりょく)から放(はな)たれて、長い長い宇宙(うちゅう)の旅(たび)を始めるんです。そして、またどこかの見知らぬ星と出会う」
「何か、宇宙のロマンですよね。あたしも、そんな出会い、あるのかな」
「僕と一緒(いっしょ)に月へ行きませんか?」男は唐突(とうとつ)に彼女の目を見つめて言った。
「えっ?――まさか、あなた。あたしを…」
 彼女の胸(むね)は高鳴(たかな)った。待ちこがれていた人がやっと現れたのかもしれない。
 彼はカバンから一枚のチラシを取り出した。彼女にそれを渡(わた)して、
「すぐそこの公園(こうえん)で天体観測会(てんたいかんそくかい)をやるんです。近所(きんじょ)の子供たちも大勢(おおぜい)来るんですよ。もしよかったら、見に来ませんか? いや…、ぜひ来て下さい。お願いします!」
<つぶやき>幸せは待っていたってダメ。自分で手を伸(の)ばさないと、つかむことなんか…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする