みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0401「バンド仲間」

2018-12-06 18:20:58 | ブログ短編

「断(ことわ)った!?」バンドのリーダーは目を丸(まる)くして言った。「あの音楽(おんがく)プロデューサー、お前だったらメジャーになれるって、あんなに熱心(ねっしん)に言ってくれて――」
「だって、あたし、別にそういうのなりたいと思ってないし」
「なに言ってんだ。お前には実力(じつりょく)があるんだ。俺(おれ)たち、お前のこと応援(おうえん)してたんだぞ」
 ボーカル担当(たんとう)の彼女はさばさばしていた。「そんなこと言われても。あたし、歌うのってそんなに好きじゃないし。それに、あたし、来月結婚(けっこん)するんだ」
 彼女の爆弾(ばくだん)発言に、バンドのメンバーは一瞬(いっしゅん)、凍(こお)りついた。リーダーは言った。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺たち、そんな話、聞いてないぞ」
「えっ、言わなきゃいけなかった? 別にいいじゃん、そんなの」
「よくないだろ。俺たち仲間(なかま)なんだからさ。そういうことは言えよ。俺たちだって、お祝(いわ)いとかしたいし…。それに、どんな男かちゃんと紹介(しょうかい)しろよ。それくらいできるだろ」
「だって…。彼ってとっても繊細(せんさい)でシャイなの。こんながさつな人たちに会わせたら、どうなっちゃうか分かんないでしょ。それに、あたし、もうボーカルじゃないし。――新しいボーカル、募集(ぼしゅう)してるんでしょ。知ってるんだから」
「募集したって、誰(だれ)も来るわけないだろ。こんな、むさ苦(くる)しい男だけのバンドにさ」
「じゃあ、あたし、戻(もど)ってもいい? いいよね? あたしがいないと、お客(きゃく)来ないし」
<つぶやき>女心は、むさ苦しい男には分からない。彼女がどんな思いで決断(けつだん)したか…。
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